「世界一平らな場所」とも言われるウユニ塩湖(本間さん提供)
「世界一平らな場所」とも言われるウユニ塩湖(本間さん提供)
雨期には雨水が地表に張り、「天空の鏡」が見られる(本間さん提供)
雨期には雨水が地表に張り、「天空の鏡」が見られる(本間さん提供)
塩湖では遠近感がなくなるため、さまざまなトリック写真が撮影できる(本間さん提供)
塩湖では遠近感がなくなるため、さまざまなトリック写真が撮影できる(本間さん提供)
強い日差しと風にさらされ、地表に散乱しているごみ(本間さん提供)
強い日差しと風にさらされ、地表に散乱しているごみ(本間さん提供)
乾期のウユニ塩湖。地表が観光車両の土で変色している(本間さん提供)
乾期のウユニ塩湖。地表が観光車両の土で変色している(本間さん提供)

 地平線まで真っ白な塩の大地が続くボリビアの「ウユニ塩湖」。12月から4月ごろまでの雨期には、平らな土地に張った雨水が鏡のように空を映し出す「天空の鏡」が見られることで有名だ。日本から訪れる人も多いが、現在、観光客の増加によりある問題が起きているという。

 ウユニ塩湖は、標高約3700メートルの高地にある、面積約1万1000平方メートルの塩が堆積した湖だ。地殻変動によってアンデス山脈が隆起した際にたまった海水が蒸発してできたという絶景は人々の心を引きつけ、ボリビアの一大観光地となっている。

 ところが、観光客が残していくごみや排せつ物が、現地住民の生活に大きな影響を与えているという。ボリビアを訪れる観光客は年間120万人以上といわれ、ウユニ塩湖にも多くの人が足を運ぶ。その際に出る膨大なごみが、住民や家畜の健康被害を引き起こし、地下水汚染などにつながっているというのだ。また、観光車両の土が路面につき、地表が茶色く変色する現象も起きている。

 この問題に数年前から取り組んでいるのが、現地ガイドとして年間1500人以上の観光客を案内してきた本間賢人さん(29)だ。18歳で南米の自然保護や環境問題に興味を持ち、大学卒業後にコスタリカにわたった。エクアドルの旅行会社などでガイドを務めるうちにウユニの環境汚染を知り、2015年8月に環境保全団体「Projecto YOSI(プロジェクト・ヨシ)」を設立した。

 本間さんによると、焼却場などの処理施設がないウユニでは、ごみは埋め立てて処分される。しかし、地中で分解されないスーパーのレジ袋やお菓子の容器といったプラスチックごみは再び地表に上がってしまうのだ。1日に排出されるごみは約120トン、25メートルプール2杯分ともいう。

「あなたたち観光客は一度来て自分の国へ帰るだけ、私たちは一生ここに住み続けるのです」

 本間さんは15年3月ごろ、有識者を集めてごみ問題について討論をした際に、現地女性から言われた言葉が忘れられない。解決策を模索する中で、神奈川県平塚市にあるブレストという会社がプラスチックごみを石油に戻す装置を開発していることを知った。油化装置を使えば、1キロのプラスチックごみから約1リットルの石油を精製し、エネルギーとして活用できる。

「南米の観光地で起きている問題を日本の企業が持つ技術と結び付けられないか」。15年6月ごろ、観光車両のドライバーや行政に、油化装置の活用を提案してみたところ乗り気だったため、同社に相談。導入について、同社から賛同と協力を得られることとなったという。

 同社は太平洋の島国、パラオに油化装置を導入している実績もある。伊東昭典社長は「プラスチックごみが石油に変わり、その石油から発電することもできる。ウユニやパラオでの活用をきっかけに、日本でもごみ問題に興味を持ってもらえたら」とごみ減量意識の日本への波及にも期待する。

 ただし、使用を想定する小型油化装置1台の導入にかかる諸費用は200万円程度。日本のクラウドファンディングサイトなどを利用して資金を募っているが、難しい状況だ。それと並行して、観光客がよく利用するホテルやレストランに協力を求めるほか、現地の小中学校でのごみの分別の授業や環境省や市役所、大学と連携して啓発冊子の制作にも乗り出している。

 観光業者や行政と話をしていくうちに、現地でも問題意識が高まり、14年に初めてウユニの町にごみの分別を呼びかける横断幕が掲げられた。また、16年1月に開催されるダカールラリーでは、環境省と共同で環境教育のブースを出すことも決まった。

 本間さんは「最初は遊び感覚でも良いので分別を習慣化し、最終的に町をきれいにして塩湖を保全することが、自分たちの生活を豊かにすることだという意識が高まればベストだ」と感じている。

 とはいえ、プロジェクトはまだ始まったばかりだ。どこが金銭的な負担をするのか、装置の管理をするのかといった課題もある。本間さんは「ボリビア初の環境と観光を両立したモデルケースにしたい」という夢に向けて、再び日本でのクラウドファンディングを検討している。美しい絶景を守るため、多くの人に支援の輪が広がることを期待したい。

(ライター・南文枝)