「アナとしての専門性を高めたかったのでフリーになりました。異なるいろいろな局で経験が積めたことが収穫です。アナウンサーとしての実力も高めることができました」

 アナの仕事以外の雑用に追われるという意味では新人も例外ではない。お茶、お菓子出しはもちろん、局によっては上司、先輩の「夜食の手配」も行わなければならないところもあるという。

 だが、新人女子アナにとって画面に出ていないときの業務以外でもっとも厳しい雑用が清掃である。地方局では新人アナの入社が途絶えると2年目、3年目でもこれを行わなければならない。前出の元関西の地方局アナがその実態を明かす。

「始業時刻30分前に出社、在籍するアナウンサー全員の机の下をちりとりとほうきで掃除します。私は入社以来3年間、女子アナの後輩が入ってこなかったので入社4年目にしてやっと朝の清掃から開放されました」

 マスコミ業界のなかでも専門性が高い女子アナに清掃を行わせるのには理由がある。

「局アナは“局の顔”です。品格が求められます。だから社会人としての基本や礼儀がなっていなければなりません。それを身に着けるために習慣化された朝のルーティン、これが掃除です。人より早めに出社して掃除を通して品格を磨く。そこに尽きます」(元在阪テレビ局役員)

 局アナとして局に残り管理職の道を歩むか。それともみずからのアナウンス力を表看板としてフリーに転じ、“生涯一アナウンサー”、スペシャリストを目指すのか。

 いずれにせよ、これからも続くであろう女子アナのフリー転身劇とその後は、社に残るか否かの岐路に立たされる世のビジネスパーソンが、みずからのキャリアプランを考えるうえでのヒントとなることは間違いない。

(ライター・志村ひな子)