「住民投票では、橋下市長に『一泡ふかしたれ!』てなもんや。それで反対票を投じた。“大阪都”になると保護を打ち切られるかもしれん。そう思ったんや。でも住民投票が否決されたら、ケースワーカーゆうんか? 大阪市の職員が偉そうにしよる。それで今回は市職員が嫌う、橋下前市長の後継者ゆうのに入れたったわ!」

 今回の大阪市長選では、西成区の開票結果は、当選者の吉村氏が2万1091票、次いで元自民党大阪市議で、自民党推薦、民主党、共産党からも自主投票という形で応援を受けた柳本顕氏(41)が2万1104票と、わずか13票差しかない。

「新聞や週刊誌読んでたら、どうも柳本優勢ゆう雰囲気やん? こいつは市職員が応援しとるんやろ? せやから市の職員がのさばるんや。だから今回は市の職員に『一泡吹かせたれ』ちゅう感じで吉村に入れたったで。でも、ホンマに当選するとは思わなんだ。これから俺ら保護受けてる人間への締め付けがきつなるんかな?」(西成区・生活保護受給者、ナカタさん)

 政策よりも先に感覚で投票する。その投票行動が招いたかもしれない選挙結果に、今、西成区の一部住民は戸惑っている。

「三角公園の将棋でも、1回は『待った』ありやで。今回の選挙結果もそうはいかへんやろか?」(前出・ナカタさん)

 将棋と違い、“待った”なしの選挙結果は、よほどのことがない限り覆ることはない。知事・市長とも大阪維新の会所属の首長を頂くことになった大阪府・市では、「大阪都構想」議論の再燃のみならず、西成区一部住民の重大な関心事である生活保護受給についてもメスが入れられる可能性が高まった。一泡吹かされたのは、かつての橋下市長や大阪市行政に「一泡吹かせた」つもりだった当の住民たちではなかろうか。

※本文中、仮名はカタカナ。一部、敬称略

(フリーランス・ライター 秋山謙一郎)