相手は自陣に引いて守っているだけなら、シンプルにサイドチェンジを交えながら両サイドを突破する波状攻撃を仕掛ける。だからこそ、ボランチにはシンプルなプレーが特徴である山口蛍と遠藤航を起用したのだろう。だが、それが「最大の誤算」だった。パスミスが散見されたほか、人工芝のためプレーとパスのスピードが遅く、彼らのパスはカンボジア守備陣に簡単に読まれてしまった。

 ところが、後半から遠藤に代わって柏木陽介が入ると、日本の攻撃は劇的に変わった。46分、柏木が岡崎慎司に絶妙のピンポイントパスを送ると、岡崎のヘッドの折り返しから日本はPKを獲得した。このPKはキーパーに阻まれたが、51分に柏木のFKが相手のオウンゴールを誘い、“待望”の先制点を手にした。

 さらに終了間際。交代出場の本田圭佑がダメ押しの2点目を決めて勝利を決定づけた。柏木や本田の「勘どころを押さえたプレー」を遠藤や山口がすぐにマネすることはできない。こうした若手選手の未熟さを見抜けなかったことを指して、指揮官は「私の責任だ」と言ったような気がしてならない。この日の収穫は、選手を見極めるために、カンボジア戦はリスクを冒してもトライした価値があったということだ。

サッカージャーナリスト・六川亨=カンボジア・プノンペン)