創刊号の誌面。左下には「パソコンの空き箱が邪魔です 捨ててもいいの?」という質問も
創刊号の誌面。左下には「パソコンの空き箱が邪魔です 捨ててもいいの?」という質問も

 パソコン初心者向けのQ&Aガイド『パソコンで困ったときに開く本 2016』(朝日新聞出版)が今年も発売された。『パソコンで困ったときに…』シリーズは1996年11月に創刊されて以来、毎年新年度版を発売しており、この2016年版で20冊目になる。1996年と言えば、マイクロソフトのOSはWindows95だった時代。記憶媒体はフロッピーディスクで、ネットへの接続は、電話線とモデム利用が一般的だった。職場や家庭にようやくパソコンが普及し始めたころで、多くの人がパソコン初心者だったため、いろんな困りごとがあったことが想像される。

 実際に96年版を見てみると「キーを打っても英字ばかりで日本語が出てきません」「(マウス)ダブルクリックがうまくいきません」「モデムの音(接続時の)がうるさいんですが…」など「自分もこの当時始めてパソコンに触れた!」という方々には懐かしく感じられる疑問への回答がならんでいる。反対に、ものごごろついた時には家にパソコンがあった若い世代にすると「モデムの音がうるさいってどういうこと?」とその困りごとの意味すら不明なものもあるだろう。

 世代は代わり、パソコンが当たり前のように各家庭に普及しても、年々ソフトやハード、さらに通信などの利用環境は進化するため、それぞれの世代でそれぞれの「困りごと」は発生し続けているようだ。それゆえ、『パソコンで困ったときに…』シリーズはこれだけ版を重ねてきたのだろう。

 最新号の2016年版はWindows10についての特集が巻頭にある。OSが変わるタイミングは、同時に困りごとが一気に増えるタイミングだ。

Q:ごみ箱が消えた!
A:アイコンが表示されていないだけなので再表示させましょう

Q:画面全体がスタートメニューのようになった
A:「タブレットモード」になっています。

など、OSをWindows10に変えたユーザーが最初に戸惑うだろうQ&Aや、7や8.1からWindows10に無料でアップグレードする方法なども解説されている。

 ところで、この20年、一貫してパソコンユーザーが困り続けている問題はあるのだろうか。毎年のように掲載されている困りごとはなにかと、長年この本の編集にたずさわる編集部の三宅敏之さんにたずねたところ

●スピーカーから音が出ない
●テンキーで数字が出ない
●勝手に《かな入力》になった
●画面の文字が小さくて見にくい
●間違ってファイルを上書きしてしまった
●ファイルの圧縮・解凍がわからない

「などの疑問は最初のころからありました。パソコン操作の大前提のようなクエスチョンはやはり残り続けますね」とのこと。

 ちなみに上書きしてしまったファイルは、これだけ技術が進歩しても取り戻せないことが多いようで、最新版でもその回答は「あきらめるしかないですが『ファイル履歴』で復活できることもあります」となっている。また、テンキーで数字が出ないのは、ご存じのように「NumLock」ボタンがオフになっているためなのだが、このように簡単に解決できそうな問題でも、毎年のように読者から困ったとの声があるという。パソコンはこの20年で驚くほど進化した部分がある一方で、ずっと置き去りにされており、ユーザーを困らせ続けている課題も数多くあるようだ。