オオサンショウウオの寿命は、1830年にシーボルトがオランダへ持ち帰った個体が約51年生存し、飼育下では最長と言われている。これまでにマイクロチップを埋め込んだ個体のうち、30年以上が過ぎたのは9匹で、最も長い個体は38年8カ月だ。あと12年数カ月追いかければ、最長記録に達する。

 他にも、人工巣穴などで見つかった卵をふ化させ、5歳まで育ててマイクロチップを埋め込み、放流する取り組みも行っている。これらは生まれた年がはっきりと分かっているため、長い時間をかけて追跡調査すれば、寿命の解明につながる。

 しかし、それには気の遠くなるような時間が必要で、栃本さん1人ではとうてい達成できそうもない。このため、08年に研究所をNPO法人化し、組織化や後継者の育成にも力を注ぐ。副理事長には鳥取県でオオサンショウウオの調査をしてきた岡田純さん(47)をスカウトし、地域の人たちも巻き込んで運営。子どもを含む多くの人たちにオオサンショウウオに興味を持ってもらおうと、夜間観察会や施設の公開見学会(月2回)なども行う。

 研究所というと堅苦しいイメージだが、ハンザキ研究所に関しては、栃本さんの穏やかな人柄のせいか、地域の人たちが町おこしも兼ねてボランティアで運営に参加するなど、ほのぼのとした雰囲気を醸し出している。

 栃本さんは、昔はオオサンショウウオがそんなに好きではなかったという。だが、「もはや好きか嫌いかの問題ではない。オオサンショウウオはほっといてほしいだろうが、40年間(捕まえて測定するなどして)痛めつけたつぐないだと思い取り組んでいる」のだとか。岡田さんは「これまで集めたデータはとても貴重。次の世代にバトンタッチするまで引き継いでいきたい」と栃本さんを支える。

 果たして“謎の生物”の寿命は解明なるか。栃本さんらの挑戦に期待したい。

【泳ぐオオサンショウウオ幼生の動画】
https://youtu.be/yn1P5inEKUo

(ライター・南文枝)