――今後も定期的に女性限定上映をされる予定はないのでしょうか?

斎藤:難しいですね。古くからのお客さまでネットの情報を見ない方もたくさんいらっしゃいます。そうした方々が電車に乗って劇場に来てくださったのに「今日は女性限定なので」と帰さなくてはいけなくなる可能性もある。リニューアルオープンというタイミングだったからこそできた企画でした。でも、ピンク映画の良さや上野オークラ劇場を知ってもらえましたし、ピンク映画を観たいと思っている女性もたくさんいるんだなということが確信できた貴重な機会でした。

――新しい風を吹き込みつつも、昔からのお客さまをしっかり大事にしているんですね。ほかにも監督や女優さんによる舞台挨拶や握手会など、イベントも数多く行っていますよね。

斎藤:新規のお客さまも増やせるので、月に1度はイベントをやるようにしています。ピンク映画館でこんなイベントをやっているところなんて他にはほとんどないですね。映画を観に来てもらえたらその料金で舞台挨拶を観られて握手もできるのでなかなかお得ではないかと。有り難いことにイベントは毎回、満席になるほど盛り上がります。女優さんたちからはイベントでお客さんの顔を見られることが「励みになる」ととても好評なんです。

 上野は秋葉原が近いので、ピンク映画に限らずアイドルや芸能人などのイベントを追っかけているイベントマニアの方々も足を運んでくれるのですが、彼らからの評判もとてもいいんです。「何かの購入特典もなく参加できるし、握手をする時間も長い“神イベント”だ」って。イベントはお客さまに楽しんでもらうことを一番意識してやってきていることなので、そういった感想が出てくるのはとてもうれしいです。

――上映は3本立てですよね。映画を3本も観られてイベントにも参加できるとは、とても付加価値が高いと思います。イベントを通じて初めてピンク映画を観たというお客さんからはどんな感想がありますか。

斎藤:よくあるのは、「お目当ての作品より何の前情報も期待もしていなかった他の作品がとても面白かった」という新しい発見や作品との出会いをされたという声です。作品1本も約60分か70分ですから見やすいというのもピンク映画の魅力です。また、ピンク映画にはAV女優さんも多く出演されているわけですが、パソコンやテレビと違って大スクリーンで自分の好きな女優さんを見られること、さらに彼女たちのAVではみせることのないドラマ演技に驚いたり感動したりする人も多いですね。

――上野オークラ劇場で多くの方がピンク映画の面白さを発見しているんですね。最後に今後の展望を教えてください。

斎藤:私たちはピンク映画の文化を守りたいというより、ピンク映画の普及をもっと攻めていきたいという意識でいます。仕掛けて攻撃して、ピンク映画を皆さんに知ってもらえるために映画館としてまだまだやれることをやっていこうと思います。

(ライター・石狩ジュンコ)