また、12年からは「エコ出願」と銘打ち、インターネット出願を導入したことも話題となった。出願の際の利便性やミス防止を重視し、毎年高さにして東京スカイツリー3本分、万単位で廃棄される願書を無駄にしないことが目的だった。ネット出願の場合は、検定料を3000円割り引いた効果もあったのか、紙での出願を求める声はほとんどなく、14年からは完全ネット出願に切り替えた。

 思い切った取り組みには、わけがある。関西の私大では、長らく「関関同立」(関西学院大、関西大、同志社大、立命館大)の次のランクとされるグループ「産近甲龍」(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)に属してきた近畿大。しかし、広報部次長の角野昌之さんによると、ある時、偏差値だけでなく、論文公表数や研究成果などさまざまな角度から比較してみたところ、「明らかな5番目、6番目ではないことが分かった」という。

「大学の序列を壊すことができないか」。そう考えた同大は、広報の “選択と集中”にも力を入れている。例えば、09年の広告は、2年前と比べて電車の中づりなどの交通広告を1.7倍、オープンキャンパスを1.5倍に増やした。実際に人の目に触れやすく、SNSでの拡散につながりやすいからだ。逆に雑誌やインターネット広告を6、7割、ラジオ、テレビ広告は数%台まで減らした。

 新聞広告は同程度だが、他の大学と小さなスペースを分け合う連合広告は、現在は廃止。その代わりに年1回、大学の象徴でもあるクロマグロに特化した全面広告を打つことにした。「連合広告では、現在ある13学部48学科の名前を書いただけで(スペースが)パンパンになる。(30年以上にわたる)ストーリーがあり、共感してもらいやすいマグロで訴えることにした」(角野さん)。

 狙いは当たった。「マグロ大学って、言うてるヤツ、誰や?」「固定概念を、ぶっ壊す」といった、挑戦的なコピーとデザインの広告は話題になり、13年度の朝日広告賞なども受賞している。

 角野さんは「うちは今年で90周年だが、他の大学は140周年に入っている。伝統が少ないからこそ、新しいこともできる」と話す。現在は、来春開設される国際学部のPRに励む。これもまた、世界で語学学校を展開するベルリッツコーポレーションと連携し、ビジネス英語の指導に特化するという珍しい取り組みだ。大学の“グループ解体”は果たせるのか。今後に注目したい。

(ライター・南文枝)