参加者は司会者とのやりとりで、「制作にあたって失敗したことや妥協点」すなわち、「ヘボ・ポイント」を語る。たとえば、こんな感じだ。

「ソーラーパネルを使ったのに曇っていて動かないので手持ちライトを使っている」

「ポンプ式のかえるのおもちゃを8連装備したが、かえって重くなり前進できない」

「2人の操作者が息を合わせないと前進できないが、息が合っていない」

 作り手の必死さが空回りするのが本番の醍醐味。戦いに技術的な駆け引きはほとんどなく、会場は終始、爆笑に包まれている。「ヘボい」ということをさげすむのではなく、温かい笑いが起こるのが、ヘボコンならではの味わいである。
  
 優勝は、金沢市のグループが制作した「ブリリアントブリ小僧」、準優勝は新潟大学生のサークルが作った「チューリップトキライスどすこい」だった。前者は富山湾の冬の味覚・ブリを掲げ、後者は富山の花と新潟の鳥などをモチーフとしている。「地域密着型」のロボットがトーナメントを勝ち上がった格好である。

 最も栄誉ある「技術力が最も低かった賞」には富山県魚津市在住の会社員による「V8」が輝いた。空気を送ると動くカエルのおもちゃを8個連ねてある。この会社員、実は地元メーカーの技術職らしいが、高度な技は出ず、カエルも跳び上がらなかったという「ヘボさ」が評価され、栄冠を掴んだ。

 審査員賞は人間ドラマあふれる2体が選ばれた。父親の尿管結石からヒントを得て作られたロボットと、会場となった商店街にあるビリヤード店の店主の写真を前面に出した力作である。これらは性能とは全く関係ない魅力をアピールし、会場の笑いを誘っていた。

 この大会には異色の参加者がいた。米国のジャーナリスト、スティーブン・フェザーストーンさんである。科学雑誌の取材で、ヒューマンロイドや介護用ロボットなど、精巧な日本のロボットに関心を抱いて来日し、「ペリ子」なるロボットを1日で作り上げて緊急参戦した。

「ハイテクロボットと『コインの裏表』のように対照的な存在として『ヘボコン』に興味を持った。石川さんの『勝ちや高性能を狙うのではなく、まず作ることが大切』という言葉に共感できる」(フェザーストーンさん)

 制御不能のロボットに心酔する参加者の姿に、日本人のロボット愛を見たということか? 大会はまだまだ続く。10月24日と31日には都内で、11月7日には北九州で開催する予定だ。

(ライター・若林 朋子)