特にエセオタクは、リア充オタクのなかでも、オタク知識が乏しく(あるいは、ほぼゼロ)、「自分がオタクであること」を自称することで、超お手軽な「好ましきキャラ付け」を行い、コミュニケーションツールとして活用しているのだという。

 本書では、その事例のひとつとして、超大手企業に内定、容姿端麗な早稲田大学4年のNさん(21歳・女性)を取り上げている。

 彼女は、10年に始動した『ラブライブ!』について、ファン歴8カ月で“ラブライブオタク”を自称。きっかけは、大学のゼミのメンバーがラブライブ好きな人が多かったことから、あえてオタクになったのだという。原田氏は「コミュニケーションを円滑にするためにオタクを名乗ったと断定せざるを得ない」と分析し、エセオタクをこう評している。

「ただし、彼らは『オタクのライト化』と『オタク市場の増加』を引き起こしている中心人物の一タイプではあるので、市場性という観点で見ると大変重要な消費者たちといえるでしょう」(本書より)

 つまり、1人あたりの消費額が減少するなかで、彼らの存在こそが、さらなるオタク市場の拡大をけん引する大きな可能性を秘めているというわけだ。

 誰かと話すきっかけに、共通の事柄は大きな武器になる。とりわけソーシャルメディアの発展でコミュニケーション量が増加した現代では、なおさらその傾向は強くなるだろう。もはやオタクとは、若者にとってすすんで公言するものであり、友だちづくりなどで欠かせない “神器”なのかもしれない。