どうして交雑種が増えてしまったのか。京都市によると、70年代、日中国交正常化を受け、中国の動物などが日本に入ってくるようになった。食用とされている中国種を輸入した業者もいたが、文化庁が料亭などに購入禁止を呼びかけたため売れ残ってしまい、「何らかのルートで京都の川に持ち込まれ繁殖してしまったのではないか」(市の担当者)とみられている。

 栃本さんによると、オオサンショウウオは、中国では姿煮や刺し身、みそ汁などの材料として重宝されるという。そのため、乱獲により生息数が大幅に減少し、現在は養殖が行われているほどだ。研究所がある地域でも、1952年に特別天然記念物に指定される以前の昭和初期には、「山村の貴重なタンパク源として食べられていた」そうだ。

「交雑種なら、家で飼える」と考える人もいるかもしれない。だが、絶滅の恐れがある野生動植物の保存について定めた種の保存法では、中国種も国際希少野生動植物種に指定されている。京都市は「DNA鑑定を行うまではすべてを特別天然記念物として扱う」とし、見つけた場合は、市や警察に連絡をするよう呼びかけている。

 京都市の調査は来年度には終了予定で、同時に、捕獲した交雑種の扱いについても決まるという。殺処分の可能性もあり、かつて水族館で働いていた栃本さんは、「できるだけ良い状態で預かりたいが……」と複雑な心境だ。生態について謎が多いことから、例えば安楽死させるとしても、その方法から議論しなければいけないという。

 国内では、三重県名張市でも交雑種が見つかり、本年度から市内の廃校プールに隔離する取り組みが始まっている。栃本さんは「外国の生き物を持ち込むということは、その土地その土地固有の遺伝子が失われ、生物の多様性をだめにするということだ」と話し、日中国交正常化の“落とし子”が引き起こした事態を憂える。

 なお、同研究所は、月2回、公開見学会が開かれ、保護プールの交雑種にエサやり体験をすることもできる。10月は17、25日に開催予定だ。交雑種の行く末は不透明だが、生物の多様性について思いを巡らす機会としてもらいたい。

(ライター・南文枝)