プールの底で折り重なっているオオサンショウウオの交雑種
プールの底で折り重なっているオオサンショウウオの交雑種
オオサンショウウオの様子を確認する栃本所長。保護プールでは、約220匹の交雑種を預かっている
オオサンショウウオの様子を確認する栃本所長。保護プールでは、約220匹の交雑種を預かっている
プールの別の区画で飼育しているニジマスのにおいに誘われるオオサンショウウオ
プールの別の区画で飼育しているニジマスのにおいに誘われるオオサンショウウオ

 世界最大の両生類といわれ、大きなものでは全長150センチにもなる、国の特別天然記念物オオサンショウウオ。2015年7月には京都市の鴨川沿岸を悠々と歩く姿がツイッターに投稿され、話題となった。実はこのオオサンショウウオ、近年では、日本の在来種と中国種との交雑が大きな問題となっている。

 在来種の存続を危ぶんだ京都市が2011年度から鴨川水系や桂川水系で生息調査を行ったところ、14年度までに440匹を捕獲。このうち約7割が交雑種で、特に鴨川水系では、在来種の割合は約2%にとどまった。つかまえた個体が交雑種や中国種と判明した場合は、これ以上の交雑が進まないよう、隔離策を取っている。

 隔離された個体の約8割を預かっているのが、兵庫県中部の山あい、朝来市生野町にあるオオサンショウウオの調査施設、NPO法人「日本ハンザキ研究所」だ。オオサンショウウオを約40年にわたって追い続けてきた元姫路市立水族館館長、栃本武良さん(74)が、05年の水族館退職後、調査地、市川上流にある廃校となった小・中学校の校舎を利用して設立した。

 京都市から預かった個体約220体は、研究所内にあるプールで飼育されている。逃亡防止のため、板の返しなどの措置が取られたプールの中をのぞき込むと、在来種と中国種「チュウゴクオオサンショウウオ」の交雑種が、底で折り重なっていた。大きさごとに区画分けされ、中には全長140センチの大きな個体もいる。

 栃本さんによると、おっとりとした性格の在来種と比べて、交雑種は攻撃的で活発だという。えさの冷凍アジを与える時は仲間同士で奪い合い、腕やしっぽが切れることもあるそうだ。

 交雑種は、茶褐色に黒い斑紋がある在来種に近いものから、全体的に黒紫色っぽい中国種に近いものまで、体の模様はさまざまだ。近年は交雑が進み、見た目では交雑種かどうかが分からなくなっているため、DNA鑑定を行い判定しているのだという。同研究所以外では、京都水族館で57匹(15年2月時点)が飼育されている。

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