眼球のなかに一枚のガラスがあり、そこに白いペンキを塗られたような感覚、そこから光がチカチカと差し込んでくる。眼を閉じると、赤や緑のオーロラのような光が絶え間なく続く。これが災いして眠れない。発症翌日とはいえ、これは結構なストレスだった。

 医師から眼球の写真を見せてもらった。素人目にも、血管があちこちで爆発したような痕がわかる。医師の話では、「血管が破裂している様子」だという。

 結果、精密検査を受けるように言われ、眼科では著名な地元病院の紹介状を出してもらった。この紹介状には、「網膜中心静脈閉塞症の疑い」というひとまずの病名がつけられた。医師には、すべての予定をキャンセルし、翌日の朝一番でこの病院に通院するよう告げられた。

 帰宅後、インターネットでこの病名を検索すると、女優の川島なお美さんの夫でパティシエの鎧塚俊彦さんが発症した病気だとわかった。鎧塚さんは、この病で結局、左眼を失明したという。1965年生まれの鎧塚さんと1971年生まれの私はほぼ同年代だ。失明への不安は一挙に膨らんだ。

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