わらじをはき、願い事をした人のところまで歩いて行くといわれている「幸福地蔵菩薩」(鈴虫寺で)
わらじをはき、願い事をした人のところまで歩いて行くといわれている「幸福地蔵菩薩」(鈴虫寺で)
数千匹という鈴虫の音色に囲まれて聞く「鈴虫説法」。前方に並んでいるのが鈴虫の飼育ケースだ(鈴虫寺で)
数千匹という鈴虫の音色に囲まれて聞く「鈴虫説法」。前方に並んでいるのが鈴虫の飼育ケースだ(鈴虫寺で)
寺の入口へと続く石段。休日などは1時間半待ちの行列ができるという(鈴虫寺で)
寺の入口へと続く石段。休日などは1時間半待ちの行列ができるという(鈴虫寺で)
中央下部の穴をくぐると悪縁を切り、もう一度くぐると良縁を結ぶという「縁切り縁結び碑」(安井金比羅宮で)
中央下部の穴をくぐると悪縁を切り、もう一度くぐると良縁を結ぶという「縁切り縁結び碑」(安井金比羅宮で)
「縁切り井戸」として信仰を集める「鉄輪の井戸」(中央)。家と家との間の細い路地を進むとある(命婦稲荷社で)
「縁切り井戸」として信仰を集める「鉄輪の井戸」(中央)。家と家との間の細い路地を進むとある(命婦稲荷社で)

 パワースポットの宝庫といわれる京都。縁結びや学業成就、健康、商売繁盛といった、ありとあらゆる神様が、街のあちこちにまつられている。9月の大型連休、シルバーウィークにおススメのパワースポットを紹介すべく、8月下旬、ひと足お先に京都を訪ねてみた。

 紅葉の名所でもある嵐山の南、阪急電鉄嵐山線の松尾大社駅から歩いて約15分、JR京都駅からバスでも行かれる臨済宗のお寺、妙徳山華嚴寺(けごんじ)。一年中鈴虫の音色を聞くことができることから「鈴虫寺」とも呼ばれ、全国各地から人が訪れる。

 そんな鈴虫寺の山門脇にまつられている、わらじを履いたお地蔵様「幸福地蔵菩薩」が、ひとつ目のパワースポットだ。ふつうのお地蔵様は裸足だが、ここのお地蔵様は日本で唯一わらじをはいている。というのも、願い事をした人の家まで歩いて叶えに来てくれるからなのだという。

 入り口で拝観料(大人500円、中学生以下300円)を払って中に入ると、禅宗の茶礼であるお茶とお菓子、お坊さんの説法でもてなされる。その後、お地蔵様のお守り「幸福御守」(300円)を購入し、お地蔵様の前で両手に挟んで願い事をする。30年ほど前から有名になり、ゴールデンウィークや紅葉の時期には1日3000人以上が訪れるのだとか。

 お地蔵様のご利益もさることながら、6000~7000匹の鈴虫の音色をBGMに聴く「鈴虫説法」も人気だ。京都のお寺は拝観して終わり、というところも多いが、このお寺では、十代目住職、桂紹寿さん(44)をはじめとした数人の僧りょが交代で、参拝者に説法をしている。

 この説法、お寺のことや日々の心の持ちようなどを説いてくれるのだが、軽妙な語り口ですっと心に入ってくる。この日は「苦しまずに生きる三つのキーワード」として、「素」(どんな自分も受け入れる)、「歩」(幸せは自分の手でつかみ取る)、「磨」(歩きやすくするため、腕と心を磨く)を挙げていた。3語を並べ替えると「スマホ」になるというオチ付きで、さすが関西、といったところか。

 願い事、お守りは1人につきひとつだが、家族や友人の分もお守りを購入し、代わりにお願いすることもできる。願い事がかなったら、お礼参りも忘れずに。住職の桂さんによると、良縁や病気の治癒、入試などと人によって願い事は様々で、「リピーター率は非常に高い」そうだ。

 続いて紹介するのは悪縁を断ち切りたい、自分の性格で直したいところがある、という人におススメのパワースポット、京都市東山区にある安井金比羅宮だ。花街・祇園から少し歩いた場所にあり、人との縁だけでなく、病気や酒、タバコ、ギャンブルなどとの縁切りにもご利益があるという「縁切り縁結び碑(いし)」で有名だ。

 碑は高さ1.5メートルで幅3メートル、絵馬のような形をした巨石で、中央下部に人間が1人やっと通れる大きさの穴がある。表面は、願い事が書かれた形代(かたしろ、身代わりとなるお札)にびっしりと覆われており、少しおどろおどろしい。形代には「意志の弱い自分と縁が切れますように」「失恋を忘れ、前に進めるように」といったものから、「さよなら脂肪」といったほほ笑ましいものまで色々だ。中には具体的な人物名を挙げた、背筋が凍りそうな願いもあり、「縁切り」への切実さが伝わってくる。

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