「元は消費者金融の営業マンでした。どこかお金をなめてたところがあった。ホームレス体験や生活保護受給によって、お金のありがたさが身に染みたけれども、これほど自由で快適で、穏やかな日々を手放したくはない」

 西成の“お堅い勤め人”、白手帳持ちの日雇い労働者たちは、ホームレスたちを尻目に今日も建設現場で汗を流す。

「朝6時から夕方日没時まで働いても1日6000円しかもらえへんこともある。公園でブルーシートで寝泊まりするほうが楽といえば楽やろうな」(日雇労働被保険者手帳を持つ日雇い労働者・58歳)

 大阪市関係者によると、「将来的には三角公園のブルーシートを全面撤去、夜、公園での寝泊りを禁止する方向で調整」しているという。

 だが、懸念されるのはブルーシートの撤去によって、生活保護受給の申請が増えることだ。大阪市は生活保護受給率全国ワースト、これ以上の生活保護受給者増は行政としても耐え難い。ホームレスたちが大阪市以外の地方自治体に行けばいいという訳にもいかない。

 しかし、この生活保護受給の問題。世論の盛り上がりは大きいが、解決策となるといまだ見えてこないという現状がある。

 そもそも現行の生活保護申請のシステムに制度上の穴がある。大阪市によると、「申請時、大阪市に住んでいるという証明さえ出せれば受給は可能」だという。たとえば賃貸アパートの契約書といったものでいいという。申請者の本籍地も住民票も関係ない。

 もっとも生活保護受給が決まれば、「住民票を大阪市に移すよう指導する」(大阪市)という。だがこれは強制ではない。なので、東京都に住民票、本籍地を置いたままでも大阪市から生活保護費の受給も認められるのだ。

 前出の大阪市関係者は、「生活保護受給者の多くは大阪以外の地方出身者だ」とその実情を明かす。こうした傾向は、産業経済が発展した首都圏や中京圏でもみられる。

 生活保護費は国がその4分の3、地方自治体が4分の1を負担している。財源の乏しい自治体よりも「都市部のほうが受給申請が認められやすい」のではないか、という申請者側の心理も働く。その結果、申請者は3大都市で保護受給を申請する。

 大都市に保護受給申請が集まれば、おのずとその財源は疲弊する。生活保護費を大都市にのみ負担させる現行のシステムは、今こそ見直さなければならない。全国の自治体すべてで取り組むべき問題だ。

(フリーランス・ライター 秋山謙一郎)