秘書技能検定の問題集。受験者を深く考えさせる問題が並ぶ
秘書技能検定の問題集。受験者を深く考えさせる問題が並ぶ
準1級の面接試験審査員を務める松崎妙子さんは「秘書は補佐だが代理ではない」と語る
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秘書技能検定1級の合格証
秘書技能検定1級の合格証

 秘書技能検定(秘書検定)というと「女子大学生が就職活動を有利にするために取る資格」というイメージが強い。しかし近年、若い女性だけでなく、中高年男性や、主婦のアラフォー女性などの受験者も少なくないらしい。今、見直されている秘書検定とは? 人生も半ばを過ぎ、初めて問題集を開いてみた。  

「上司からハンカチをもらった。どう対応すべきか?」

 過去の秘書検定で出された問題の一つである。「同僚のB子はもらっていないようである。『いつもよくやってくれているから』と言われた」という状況の説明も添えられている。正解は「自分の仕事ぶりを認められたのだから喜んで受け取り、このことは誰にも言わない」である。「もらっていない同僚」に言わないことで、いらぬ嫉妬や憶測を生まない。「不公平だから」と上司に返して角が立つことは避けるべきであり、お返しも不要とのこと。5つの中から正しい対応を答える形式だが、かなり考えさせられた。

 秘書検定は1972年に「文部省認定OL職業技能検定」として発足、現在は文部科学省後援試験となっている。試験は、1級・準1級が筆記と面接、2級・3級は筆記のみで合否判定される。出題内容は、理論として「必要とされる資質」「職務知識」「一般知識」、実技として「マナー・接遇」「技能」の併せて5項目があり、理論・実技それぞれ60%以上正解しなければ合格できない。

 前出の問題は「必要とされる資質」の中の一つである。この「資質」を身に付けることが難しい。問題では、秘書としての身の処し方のみならず、組織内における人付き合いのコツを問われている。いずれも頭を抱える難問だ。「自分は組織人として失格だ」と痛感した。

「部長秘書のA子が本部長との打ち合わせから戻ってきた上司にお茶を持って行ったところ、『本部長にはついていけない』と不機嫌そうに話しかけてきた。A子はどう言えばいいか?」

 直属の上司と、その上の上司の折り合いが悪く、気まずい雰囲気の中で右往左往していた若いころの自分が思い出された。上司の愚痴に対する正しい対応は「いつも何かと大変な様子でございますね」である。当たり障りのないことを言うべきだとは思いつくが、上司を気遣うところまでは、なかなか到達できない。「若いころに身に付けていれば最強のコミュニケーションスキルになった」と思われる。

 過去の出題には珍問・奇問もある。
「社長の背広にクリーニングのタグを見つけたら、どのように対応すべきか?」
「愛煙家の上司がたばこを忘れて外出しようとしている。指摘すべきか?」

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