中国と引き分け、肩を落とす日本代表の選手たち(撮影・六川則夫)
中国と引き分け、肩を落とす日本代表の選手たち(撮影・六川則夫)

 サッカー日本代表は8月9日、中国・武漢で開かれた東アジアカップ最終戦で、中国代表と1-1で引き分け、この大会で初めての最下位に終わった。

 試合開始10分。日本は、右のスローインからガオ・リン、ウー・レイとつながれて失点すると、その後も中国のカウンターにヒヤリとする場面もあった。しかし、41分に槙野智章のスルーパスから米倉恒貴のクロスを武藤雄樹が決めて同点に追いつくと、後半は足が止まった中国を攻め立てながらも追加点を奪えず、韓国戦に続き2試合連続のドローで大会を終えた。

 日本代表の監督に就任後、親善試合こそ3連勝したものの、公式戦は3分け1敗と未勝利のハリルホジッチ監督。強気の姿勢を崩さない指揮官とは対照的に、代表スタッフの表情は暗い。ハリルホジッチ監督にしてみれば、海外組を招集できず、戦術的な練習も中国戦の前の1回だけ。何度も口にしたように、準備不足と過密日程によるコンディション不足というエクスキューズがあるからに他ならない。

 ただ、勝負である以上は勝つに越したことはない。代表スタッフにしてみれば、結果が出ないことでハリルホジッチ監督に逆風が吹くことを恐れているのだろう。勝っていれば持ち上げ、結果が出ないとバッシングする日本のマスコミの姿勢をよく理解しているからでもある。だからこそ、代表スタッフにはブレない姿勢を求めたい。

 韓国戦は腰の引けた闘いに失望した。選手が自己判断でプレースタイルを変えられるようになったことが数少ない収穫だった。しかし、実力的に劣る中国戦では、相手がカウンターしか攻め手がないため、同点に追いついてからは攻め急がずしっかりとパスを回し、ショートカウンターからチャンスを作った。北朝鮮戦同様、決めるべき時に決めていれば勝てた試合だった。

 新監督を招聘して、新たな戦術の構築に着手したからといって、ほんの半年で成果が出ると思うのは性急だ。親善試合の3試合がうまくいったための勘違いもあったのだろう。ハリルホジッチ監督のカウンターサッカーを身に着けるには、まだしばらく時間がかかることを確認できた東アジアカップでもあった。

 今大会で唯一、気になった点は中国戦の後半74分に武藤に代えて柴崎岳を投入したことだ。運動量が豊富でパスも出せてゴール前にも飛び込む武藤は危険な香りを漂わせていた。ところが柴崎は、武藤ほど運動量は豊富ではなく、どちらかというとパサータイプ(パスを出す選手のタイプ)。バテていた中国にとって、どちらの選手が効果的か。まして、後半61分には川又堅碁に代え、1トップに興梠慎三を投入しただけに、ここは“浦和コンビ”で勝負して欲しかった。

 この選手起用だけが疑問に思ったハリルホジッチ采配だった。

(サッカージャーナリスト・六川亨)