小泉今日子の30代はなぜ地味だったのか

助川幸逸郎dot.#小泉今日子になる方法

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 どうすれば小泉今日子のように、齢とともに魅力を増していけるのか―― その秘密を知ることは、現代を生きる私たちにとって大きな意味があるはず。

 日本文学研究者である助川幸逸郎氏が、現代社会における“小泉今日子”の存在を分析し、今の時代を生きる我々がいかにして“小泉今日子”的に生きるべきかを考察する。

※「なぜ小泉今日子は2010年代に『再浮上』したのか?」よりつづく

*  *  *
 小泉今日子は1966年生まれです。私の身近にも、「小泉世代」の女性がたくさんいます。彼女たちは、「カッコいい消費」を行うことにある時期まで執着していました。

 それを象徴するようなテレビドラマがあります。日本では2000年から2004年にかけて放映された『セックス・アンド・ザ・シティ』(以下SATC)です。アメリカでつくられたこの作品は、ニューヨークで「恋愛」と「消費」に生きる30代の女性四人組を描いています。

 私のまわりの「カッコいい消費」に憧れる女性たちは、軒並みSATCのファンでした。世紀の変わり目のころの先進諸国では、30代が「消費文化」の鍵を握っていた――そのことを、このドラマの登場人物のライフスタイルと、それに共感した多数の日本女性の存在は物語ります。

「消費文化」のなかで、「恋愛」には特別な意味が託されていました。二人乗りの輸入スポーツカーに乗る。高級ブランドの衣類や装飾品を贈りあう。評判のレストランでシャンパンを開ける――「カッコいい消費」を実践するには、カップルで行動することが最適です。

 一方、1980年代には、「男女同権を目ざす動き」によって社会制度が変わりました。日本では、1985年に男女雇用機会均等法が施行。「女性は専業主婦になるのが当然」という「常識」は急速に崩壊しました。

 このことは、時代の最先端で生きようとする女性たちをジレンマに追いこみました。

「自分自身の地位や収入」を得られなかったら、昔ながらの「専業主婦になるしかないタイプ」と変わりません。「進んでいる女性」は、そう見られるのをカッコ悪く感じます。ところが1980年代当時、「だれにも負けないキャリア」は「恋愛」するうえで障害でした。

 デートの費用を出して「もらったり」、二人で行動するときにはリードして「もらったり」――だれもが専業主婦になっていた時代、女性が「恋愛」で演じるべき役割は「してもらう」ことでした。よりたくさんの「してもらう」を達成することが、女性として評価に直結していました。こうした価値観は、社会制度が変わったからといってすぐには消えません。1980年代に青春を送った世代の女性も、「恋愛」をするときは「してもらう」立場にいなければならないという考えかたでした。

「だれにも負けないキャリア」があるということは、収入が多く、社会的地位も高いということになります。そういう女性が、スムーズに「してもらう」側にまわるのは困難です。自分よりさらに地位や収入のある男性を見つけるか。地位も収入もこちらより低い相手からあえて「してもらう」か――けれども、バリバリのキャリアのある女性が、自分より「上」の恋人を見つけるのは容易でありません。かといって、自分より「下」の相手に「してもらう」のは、達成感が今ひとつです。自分にはできないことをしてもらわなければ、女性は「してもらえた実感」を得られません。

 時代の先端を行こうとしてキャリアを求めると、「恋愛」(ということは「消費」)をうまくやれなくなる――そういう問題を、1980年代に青春を送った世代の女性は、世紀末になっても抱えていました。私のまわりの「SATCを夢中で観ていた女性」は、そろってこのジレンマにとらわれていた記憶があります。

 1990年代後半の小泉今日子は、そうした女性たちとは一線を画していました。たとえば彼女はこう書いています。

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