代表デビュー戦で初ゴールを決めた武藤雄樹(右)(撮影・六川則夫)
代表デビュー戦で初ゴールを決めた武藤雄樹(右)(撮影・六川則夫)

 8月2日、中国・武漢で開かれた東アジアカップの初戦で、連覇を目指す日本は北朝鮮と対戦し、1-2で敗れた。ハリルホジッチ監督は就任5戦目で初黒星となった。

 「中国三大かまど」と言われる猛暑で有名な武漢。試合開始時の気温は35度だったが、湿度は46%と低く、日陰の記者席にいる限りは日本の酷暑とそう変わらない。だが、ピッチで戦う日本選手の消耗度は違ったようだ。

 日本は、キックオフのボールを右サイドに大きく蹴り出し、俊足の永井謙佑を走らせるなど、立ち上がりから積極的に攻めた。3分には谷口彰悟のパスを受けた遠藤渉が右サイドからアーリークロス。これを、この試合が代表デビューとなる武藤雄樹がワンタッチで決めて、日本が先制した。

 一方、北朝鮮は30分過ぎから反撃に転じる。ただ、これは日本が消耗を避けて、高い位置からプレスをかけずに守備ブロックを下げたためで、日本の優勢は変わらない。とはいえ、38分過ぎから宇佐美貴史、永井、遠藤らが立て続けに決定機をつかんだものの、相手GKのファインセーブに阻まれて追加点を奪えなかった。

 前半を見る限り、日本が北朝鮮に負ける要素はほとんど見当たらなかった。唯一、気掛かりだったのは、決めるべき時に決めて試合を終わらせないと、“出合い頭”の一発を食らう危険があることだ。このため、後半立ち上がりの1点が勝負と見ていた。

 しかし、後半に入ると、日本は運動量がガクッと落ち、パス回しはもちろん、ルーズボールの奪い合いでも後手に回ってしまう。ハリルホジッチ監督も、試合後の会見で「前に行くか、ボールをキープするか、周りが動かず簡単にボールを失った。フィジカル的にキツイ選手がいた」と運動量の低下を認めている。

 それでも、日本は決定的な形を許さず、1-0で逃げ切れるかとみえたが、北朝鮮が勝負に出た。66分にパク・ヒョンイルを投入したのだ。公式の選手リストに身長の記載がないが、190センチ前後と推定される長身のFWである。

 北朝鮮は、こぼれ球を拾って、パクにロングボールを合わせる単調な攻撃を展開する。これが、運動量が落ちた日本にボディーブローのように効いた。そして、78分。パクが頭で落としたボールをリ・ヒョクチョルがボレーで叩き込み、同点に追いつく。さらに、88分にはパクが打点の高いヘッドで逆転劇を演出した。

 この結果、日本は次の韓国戦での勝利が、連覇への絶対条件となった。敗れたものの、堅実な守備をみせた遠藤と、試合中に消えることなく好機を演出した武藤は収穫だった。その一方、長身FWに弱点を露呈したのは日本の変わらぬ課題でもある。韓国には、日本キラーで196センチのFWキム・シンウクがいる。彼をどう封じるか、韓国戦の見どころとなるだろう。

(中国・武漢=サッカージャーナリスト・六川亨)