清宮の凄さはプロのスカウトが言うように「柔らかさ」であり「懐の深さ」に尽きる。普通、強打者と呼ばれる選手はより強い打球をめざし、「大きくバットを引く(反動を作りたい)」→「バットを上下動させる(リストを使いたい)」→「勢いをつけてステップする(強い打球を生みたい)」という動きをしたがるが、これらは打者がやってはいけない“3要素”と言ってもいい。そして、超高校級と呼ばれるような16~18歳の少年に「大きいバットの振幅で、より強く大きい打球を打ちたい」という欲求を禁止するのは難しい。しかし、清宮はその3要素を“よくない”ことと認識する判断力があり、それらを抑えつける意思の力がある。それを1年生でやれることが末恐ろしい。

 舞台はこれから甲子園に移る。清原や松井も中田も甲子園では苦杯を舐めている。清原は1985年春の選抜大会準決勝で伊野商・渡辺智男の高め快速球に3三振を喫した。中田もまた、2006年夏の選手権2回戦で早稲田実・斎藤佑樹の執拗な内角ストレート攻めにやはり3三振を食らっている。そして、松井は1992年夏の選手権2回戦で、明徳義塾の敬遠作戦の前に、1回もスイングできずに敗退した。

 清宮の評価がモンスター級に膨れ上がれば、それと同じくらい打撃傾向が明らかにされ、打者としての特徴が丸裸にされる。こうした洗礼を受け、どのように克服していくのか、そのプロセスを私は見てみたい。さらに、清宮くらいの飛び抜けた素質を備えている選手には、同じくらいモンスターな素質を備えるライバルの出現を期待してしまう。そういうモンスター対決を私たちはしばらく見ていない。
 
(スポーツライター・小関順二)