そして、攻撃では「よい形でボールを奪ったら必ずタテに入れること。前線の3人をいつも見ること」を試合開始から徹底させた。長谷部や柴崎らから本田や香川らに入ったタテパスは前半で11本(後半も11本)。そのうち2本目は、本田の先制点に結びついた柴崎のスルーパスだった。2点目は香川の左CKを槙野がボレーで蹴りこんだが、その前に宇佐美と香川がワンツーで左サイドを突破しようとして得たCKだった。

 槙野はファーサイドでフリーとなって2点目を決めたが、最初に得た右CKの時に槙野はニアに走り込むと頭で合わせて惜しいシュートを放っている。その日本はニア狙いというイメージの裏をかいたゴールでもあった。そして、3点目も香川、柴崎、宇佐美とつないだカウンターから岡崎が決めた。昨夏のブラジルW杯で生まれた全ゴールのうち、3割近くがボールを奪ってから10秒以内のシュートである。実際に秒数をカウントしたわけではないが、タテへタテへと入れる速い攻撃でイラクに抵抗する隙を与えなかった。

 短期間でなぜこれほどまで速い攻撃ができるようになったのか。その理由の一つとして、もともと日本人は技術が高くスピードもあることをハリルホジッチ監督は認めている。そこで取り組んだのが意識改革だった。「ボールを奪ったら必ずタテに入れること」を徹底することで、前線のFWの動きを意識するようになり、よけいなバックパスが減った。

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