東京大学の看板ももちろんレゴで制作
東京大学の看板ももちろんレゴで制作
東京駅を模した「駅舎」。手を触れなければ、写真撮影はもちろん自由
東京駅を模した「駅舎」。手を触れなければ、写真撮影はもちろん自由
部員がレゴによる球体の作り方を教えてくれる
部員がレゴによる球体の作り方を教えてくれる
「太陽の塔」や「東京タワー」など大型作品も多数展示。将来的には展示替えされることも検討されている
「太陽の塔」や「東京タワー」など大型作品も多数展示。将来的には展示替えされることも検討されている
廊下の壁一面に飾られた、伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」(ラスール麻生提供)
廊下の壁一面に飾られた、伊藤若冲「鳥獣花木図屏風」(ラスール麻生提供)
描かれる場所によって表面と裏面を使い分けている
描かれる場所によって表面と裏面を使い分けている

 誰しも子供のころ一度は触ったことがあるデンマーク発のブロック、レゴ。いまレゴにハマる大人が増えているという。

【東大レゴ部と三井淳平さんの作品写真はこちら】

 先日現役続行を発表したフィギュアスケーターの浅田真央さんがレゴ好きなのは有名だが、ほかにもミュージシャンのコーネリアスや批評家の宇野常寛さんなど、レゴ好きを公言する著名人は多い。

 近年になり、従来の子ども向けのラインナップだけでなく、フランク・ロイド・ライトやル・コルビュジエのマニアックな近代建築をレゴで再現した「アーキテクチャー・シリーズ」など大人をターゲットにしたラインナップも展開。子供の頃のレゴ熱が大人になって再燃するというケースも増えてきている。

 東京大学レゴ部の作品群がすごいということで、5月16~17日に開催された本郷キャンパスの五月祭へ行ってみた。

 東大レゴ部は創部以来、「安田講堂」や「赤門」といった大型作品や「ラーメン二郎」「QRコード」「パンの袋とかとめるやつ」など、これまでのレゴ観を打ち破る名作や迷作を次々と発表し話題を集めてきた。今年は例年のような大型作品は展示されていなかったが、「東京駅」や「零戦」など粒揃いの力作が並んでいた。部員がレゴの作り方をレクチャーしてくれるコーナーもあり、今年のお題は球体。実際にやってみるとわかるのだが、四角いブロックだけで球体を作るのはなかなかむつかしい。

 この東大レゴ部を創設したのが、日本のレゴファンから「神」と称されている三井淳平さんだ。2005年高校3年生の秋に「テレビチャンピオン第2回レゴブロック王選手権」(テレビ東京)で準優勝。そのまま現役で東京大学に入学し、レゴ部を設立。卒業後も一般企業に勤めながら数々のレゴ作品を発表し続け、2011年7月には世界で13人目、アジアでは初となるレゴ社認定「プロビルダー」に選ばれている。そして今年4月、ついにレゴ作品制作事務所「三井ブリックスタジオ」を創業。レゴフリークの間では知らない人はいないほどの有名人だ。

 三井さんの作品は「三井淳平アートミュージアム」でいつでも見ることができる。このミュージアムは、川崎市の特別養護老人ホーム「ラスール麻生」内にあり、入居者と社会とのコミュニケーションツールとしてのレゴの力に注目して開設されたものだ。ここには、かつて東大レゴ部で展示され話題を集めた「太陽の塔」や、「東京タワー」「日本銀行」などの大型作品や、フェルメールやゴッホの絵画をレゴ化したものなど、三井さんの傑作の数々が常設展示されている。なかでも目を引くのが壁一面に飾られた伊藤若冲の『鳥獣花木図屏風』を模した作品。大きさはなんとヨコ10m×タテ1.8m! 原寸とほぼ同じ大きさで、25万ピースものレゴでできている。

 伊藤若冲の原画は「升目描き」という独自の画法で描かれているのだが、その升目とレゴの1ピースの大きさがほぼ同じという点に着目。レゴの裏面を使ったり、一部を半立体にして陰影を表現したりと、その完成度の高さとインパクトは原画をも凌駕するほど。大人が作るレゴ作品の極北といえるだろう。宇野常寛さんは「レゴとは、現実よりもリアルなブロックである」と述べているが、まさにその通り。今まで知らなかったレゴの世界に目から鱗が落ちるに違いない。

(文・写真/松岡宏大)

■三井淳平アートミュージアム(特別養護老人ホーム ラスール麻生内)
【住所】神奈川県川崎市麻生区白山1-1-3
【開館時間】9:00~17:00
【料金】無料