パソコンやスマホなどデジタル機器は完全にシャットアウト
パソコンやスマホなどデジタル機器は完全にシャットアウト
「星のや軽井沢」の全景
「星のや軽井沢」の全景
山頂でコーヒーを楽しむことができる
山頂でコーヒーを楽しむことができる
夜の散策で視覚以外の五感を意識する
夜の散策で視覚以外の五感を意識する

 スマートフォンにノートパソコン……デジタル機器の普及で、いつでもどこでも人とつながることができる。そんな時代に、あえて「脱デジタル滞在」の宿泊プランを提供する宿がある。デジタル機器を完全にシャットアウトした滞在で見えてきたものとは!?

 デジタル機器から離れ、視覚以外の五感を改めて意識する――そんなテーマのもと「脱デジタル滞在」を提供するのが、星野リゾートが運営する「星のや」だ。

 2泊3日のこの滞在プランの冒頭で、宿泊者はデジタル機器をホテルスタッフに預ける。滞在中は、聴覚や嗅覚などの五感を研ぎ澄ますワークショップに参加したり、読書や散策などをして過ごす。そしてチェックアウト時にデジタル機器と再会。現在、星のや軽井沢、星のや京都、星のや竹富島の3つの施設で展開しているプランだ。

 文字にすると何てことのないように思えるが、「星のや軽井沢」の広報・岩岡大輔さんによると「意外とハードルが高いように感じる方もいるようです」とのこと。現代人は仕事柄スマホを手放せないことが多いが、仕事から離れた旅行なら、決してハードルは高くないのでは……。そんな思いで、星のや軽井沢での「脱デジタル滞在」に挑んだ記者だったが、早々に甘い考えを改めることになる。

 脱デジタル滞在が他の旅行と違う点は、念入りな“事前準備”が必要なことだ。職種などで休日は違うし、休日でもイレギュラーで仕事の連絡が入ることもある。このため、あらかじめ仕事の関係者に向けて「○日~○日まで、諸事情により電話、メールの確認ができません」といった旨のメールを送る必要があった。念のため、SNSにも同様の投稿をして、準備万端……と思いきや、軽井沢に向かう新幹線の中で「あ、あの人にもメールを……」と次々と連絡先が増えていく。結局、宿に到着する直前までメールで連絡することになった。

 到着した星のや軽井沢は、緑あふれる森林に囲まれ、川のせせらぎも聞こえるなど、自然の魅力を間近に感じられる宿だ。客室は戸建のような造りで、チェックインはその客室の中で行われる。

 「では、早速……」と、スタッフの方が持ってきたのが、黒いアタッシェケース。この中に、スマホやノートパソコンといったデジタル機器を入れて施錠し、そのカギをスタッフに預けるのだ。アタッシェケースは客室のクローゼットに置いておくため、一応手元に残るが、自分では開けられないため、デジタル機器とは完全に隔離される。今回、記者はスマホとノートパソコン、Wi-Fiルーターを入れて施錠し、取材用のデジタルカメラのみ残した。かつては時計まで預けた人もいたそうだ。

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