さて、福井県立恐竜博物館がある福井県勝山市では、1982年に白亜紀前期の古代ワニが発見された。その後も肉食恐竜の歯や、多くの脊椎動物の化石が出ている。また、恐竜が歩いた足跡の化石や、指の先端の骨である「かぎづめ」が国内で初めて完全な形で発見された。重要な発見が相次ぎ、福井県は「恐竜の化石の宝庫」といわれるようになった。

 同博物館の研究グループは冒頭に紹介した2つに加えて、「フクイラプトル」「フクイティタン」の計4種類の恐竜をこれまでに発表した。また、恐竜を含め、恐竜とともに生きた生物や当時の環境に関わる研究をベースにして、展示・教育や観光などにわたる情報を、国内外に広く発信している。

 博物館の近くにある手取層群北谷層は恐竜時代の地層であり、そばにある野外恐竜博物館では化石発掘体験を行っている。学芸員の千秋利弘さんによると、「1日1回は研究対象となる化石が出る」とのこと。発掘の体験者が、これまでに発見されたことがない恐竜化石の第一発見者になるかもしれない。将来、新種恐竜を命名するような偉大な研究者としての第一歩を踏み出すかも……。恐竜時代に関わったすべての人の夢が、福井から広がって行くような気がする。

(ライター・若林朋子)