11蔵すべての社長が新酒発表会「11PM」に参加し、自身の新酒を振る舞っていた。この場で商談につながることもあり、決裁権のある社長がいることの意味は大きい
11蔵すべての社長が新酒発表会「11PM」に参加し、自身の新酒を振る舞っていた。この場で商談につながることもあり、決裁権のある社長がいることの意味は大きい
全国各地の11酒蔵の新酒発表会「11PM」会場で、乾杯直前の様子
全国各地の11酒蔵の新酒発表会「11PM」会場で、乾杯直前の様子
女性の参加者も目立った。女性へも受け入れられていることも、今日の日本酒人気の一因と考えられる
女性の参加者も目立った。女性へも受け入れられていることも、今日の日本酒人気の一因と考えられる

  ここ数年の日本酒人気は飛ぶ鳥を落とす勢いだ。飲食系の雑誌を中心に日本酒特集が数多く組まれ、日本酒専門誌も多数出版されている。一方で居酒屋や酒販店でも日本酒のラインナップは格段に拡大し、それらを目当てに訪れる客の姿も目立つ。

 こうした背景には、山口県の『獺祭』や秋田県の『新政』といった、日本酒好きならずとも誰もが知る「プレミアム銘柄」の台頭がある。だが、日本酒好きの話を聞くと、それらは日本酒の魅力のほんの一部であり、それに匹敵する高品質の日本酒は数多く存在し、それらを多様に楽しめることこそ今日の日本酒の醍醐味であるという。

 そして、その多様さを体感できるイベントが、近年都内を中心に数多く開催され、日本酒人気をさらに後押ししている。複数の酒蔵が集い、入場料を払えば新酒を中心に好きなだけ飲むことができる「試飲会」である。これまでも日本酒関連の協会が主催するイベントは存在したが、酒蔵が直接企画に参加し、実際に現場に足を運ぶスタイルはここ数年確立されたようだ。その現場に訪れてみると、今日の日本酒人気の“本当の理由”がわかってきた。

 3月25日夜。東京・新丸ビル7階の飲食店では、全国各地の11蔵が集まる新酒発表会「11PM」が開かれた。店内には、入り切れないほどの日本酒ファンが集まり、各蔵の新酒とともに、その飲食店が用意した限定メニューに舌鼓を打っていた。そして、11蔵の社長自らが会場を足しげく回り、自らの新酒をふるまい、参加者と交流を深めていた。

 「11PM」は今年で14年目に突入する、今日の試飲会スタイルの先駆者的な存在だ。その立ち上げメンバーの一人であり、現在も11蔵のひとつとして参加する『富久長』を作る広島県の酒蔵・今田酒造本店の今田美穂社長は、「もとは東京での販売強化を目的に、地方の酒蔵たちが集まって何かしようと思ったのがきっかけ」だと当初を振り返る。

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