天皇号が復活するのは江戸時代末期の光格(こうかく)天皇のとき。その二代後が孝明(こうめい)天皇であるから、幕末も間近になっての復活となる。つまり、およそ900年にも及び、天皇号は使われていなかったのだ。

 ではその間、天皇をどのように呼称していたのかというと、白河院・後白河院のように、その天皇ゆかりの地名や建物名に由来する「追号(ついごう)」に「院」を足した名称で呼ばれていたのだ。ちなみに「追号+院」と呼ばれていた歴代天皇が院号を取り去り、一様に「追号+天皇」と呼ばれるようになったのは、大正14(1925)年のこと。

「○○天皇という私たちに馴染みの深い呼称も、まだ再度使われ始めて一世紀も経ていないことになる。天皇は日本史を貫く不可欠の存在とされているのに、何と公式には天皇と呼ばれていなかった時代が極めて長いとは、実に意外なことといわなければならない」(本書より)

 遠山氏は本書で、初代・神武天皇から121代・孝明天皇まで、天皇一人ひとりの名前に込められた意味や由来から、その時代の歴史背景を追求している。天皇の名前から読み解く日本の歴史の新しい捉え方。気になる方はご一読を。