どうすれば小泉今日子のように、齢とともに魅力を増していけるのか―― その秘密を知ることは、現代を生きる私たちにとって大きな意味があるはず。

 日本文学研究者である助川幸逸郎氏が、現代社会における“小泉今日子”の存在を分析し、今の時代を生きる我々がいかにして“小泉今日子”的に生きるべきかを考察する。

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 マリリン・モンロー、ダイアナ妃、飯島愛――彼女たちにはひとつ、共通点があります。三人とも36歳で亡くなっているのです。

 古来、数え年の37歳(満年齢だと36歳)は、女性の「厄年」とされてきました。「最後のひとり」を出産する年齢が、これぐらいになる場合が多かったからといわれています。たしかに30代後半は、女性の体に変化が兆す頃合いです。

 現代ではこの時期に、子どものいない女性は、「産むか、産まないか」の選択を強く意識するようになるといいます。「20代の同性と自分を比較して、『他人の見る目』に違いを感じない」という人も、そろそろ減りはじめます。

 40歳までに生き方を再点検し、自分の見せ方を更新しなければならない――わかっていても、実行するのは容易ではありません。そこに至るまで、「女子」として上手くやってきた人ほど、従来の方式を手放すのに勇気が必要です。

「いい女」と呼ばれてきた人であればそれだけ、「30代後半の危機」は厳しいものになります。楊貴妃が亡くなったのは37歳、クレオパトラは39歳で世を去りました。感性と容貌にめぐまれた女性にとって、この年ごろはまさに「試練の時」なのです。

 小泉今日子が36歳だったのは2002年。この年に相米慎二監督の映画『風花』に主演し、女優として脱皮を遂げました(詳しくは、助川幸逸郎「小泉今日子が女優として成功したのは元夫のおかげ?」dot.<ドット>朝日新聞出版 参照)。この作品で「シングルマザーの風俗嬢」の役に挑み、成功したことで、彼女は「演技派」としての地位を確立します。

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