今年の日本を例に取れば、「国際Aマッチデー」は3月と6月に2試合、そして9月~11月の3か月間に6試合の計8試合である。そのうち3月の2試合はチュニジアとウズベキスタンと対戦することが決まっている。6月からはW杯アジア2次予選がスタートするが、来年3月までに8試合を消化しなければならない。そこでテストマッチを組めるのは2試合だけということになる。

 これは日本に限ったことではない。どの国も試合をしながらチームの強化・育成と結果を同時に求めなければならないのだ。そこでは、じっくりと時間をかけて攻撃の形を作り上げている余裕はない。選手の「個」の力に頼ったカウンタースタイルのチームが増えるのは当然の流れで、例外はバイエルンやバルセロナといったクラブチームの選手をベースにチームを作ったドイツでありスペインだった。

 ハリルホジッチ監督が指揮を執る3月の2試合と、6月の2試合もテストマッチに充てる可能性が高い。8月には中国で極東4か国による東アジア杯が開催されるため、2週間近い合宿が可能だが、この大会は「国際Aマッチデー」ではないため海外組を招集する強制力はないからだ。W杯アジア2次予選はできるだけ先送りしたい理由がそこにある。

 3月の2試合はブラジルW杯の3試合やアギーレ元監督の6試合のVTRなどを見ながら選手選考となるが、基本的にアギーレ時代の選手がベースになるだろう。そこでJリーグを視察し、海外組の情報なども集めた6月の2試合が、ハリルホジッチ監督にとって本当のスタートとなる。このためメンバーがガラリと変わるのかどうか、今から予測することは難しい。

 ただ、ブラジルW杯のアルジェリアを見る限り、細かくパスをつなぐポゼッションスタイルではなく、両サイドにドリブルで仕掛けられるサイドアタッカーを置くだろう。国内組なら武藤(FC東京)や小林(川崎F)、海外組では乾(フランクフルト)、清武(ハノーファー)、南野(ザルツブルク)、原口(ヘルタ・ベルリン)あたりが有力な候補になるが、ひとつ問題がある。

「4-3-3」や「4-2-3-1」システムを採用した場合、これまでサイドを主戦場としていた本田と香川のポジションがなくなってしまう。なぜなら彼らはタッチライン際を激しく上下動するタイプの選手ではないからだ。

 彼らを生かすとしたら「4-2-3-1」の「3」のセンターになるが、このポジションは1つしかない。つまり本田と香川のどちらかが外れることになる。それとも本田と香川にもサイドで攻守にハードワークを要求するのか。それはそれで、彼らがプレーの幅を広げれば面白い起用法ではある。いずれにせよハリルホジッチ監督の選考と起用法が今から楽しみだ。

サッカージャーナリスト・六川亨)