正直、本田には気の毒な試合だった。パスを受けても両サイドバックが攻撃参加しないため、なかなか前にパスを出せない。そしてボールを失ってもチェルチは守備に参加しないなど、チームとして“攻”から“守”への切り替えが遅いため、ユベントスの波状攻撃に終始後手に回った。その原因は、本田とのコンビで右サイドを活性化するI・アバーテを筆頭に、C・サパタ、D・ボネーラ、R・モントリーヴォ、N・デ・ヨングらケガ人の多さだ。

 インザーギ監督はメンバー交代でなんとか打開を図ろうとしたものの、ユベントスはミランの“個”を“組織”で封じて王者の貫禄を見せつけた。本田がミランで輝きを取り戻すには、主力がケガから復帰するのを待つしかないだろう。新戦力がチームになじむのを待つよりは、そちらの方が効果的に思えるからだ。

 なお、この試合でユベントスのC・テベスがあげた先制点は、どう見てもオフサイド臭かった。しかし、間近で見ていた副審は旗をあげなかったためゴールと認定された。試合後、ミランとユベントスの両クラブ首脳はこのジャッジについて公式サイトで激しい舌戦を演じている。ビッグクラブに有利な笛が吹かれるのはセリエAではよくあること。スペイン以上に八百長の噂が絶えないセリエAだけに、同リーグの監督やイタリア人監督を日本代表に招聘するのはリスクも高いと言えよう。

サッカージャーナリスト・六川亨)