(写真1)ジャガー・ルクルト「マスター・カレンダー・メテオライト」。自動巻き、ステンレススチール、ケース径39ミリメートル、今夏発売予定。137万円(税抜き予価)
(写真1)
ジャガー・ルクルト「マスター・カレンダー・メテオライト」。自動巻き、ステンレススチール、ケース径39ミリメートル、今夏発売予定。137万円(税抜き予価)
(写真2)IWC「ポルトギーゼ・アニュアル・カレンダー」。自動巻き、ステンレススチール、ケース径44.2ミリメートル、今春発売予定。250万円(税抜き予価)
(写真2)
IWC「ポルトギーゼ・アニュアル・カレンダー」。自動巻き、ステンレススチール、ケース径44.2ミリメートル、今春発売予定。250万円(税抜き予価)
(写真3)ヴァシュロン・コンスタンタン「ハーモニー・デュアルタイム」。自動巻き、ピンクゴールド、ケースサイズ49.3×40.0ミリメートル、世界625本限定、5月発売予定。427万5000円(税抜き予価)
(写真3)
ヴァシュロン・コンスタンタン「ハーモニー・デュアルタイム」。自動巻き、ピンクゴールド、ケースサイズ49.3×40.0ミリメートル、世界625本限定、5月発売予定。427万5000円(税抜き予価)
(写真4)A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1」。手巻き、イエローゴールド、ケース径38.5ミリメートル、6月以降発売予定。343万5000円(税抜き予価)
(写真4)
A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1」。手巻き、イエローゴールド、ケース径38.5ミリメートル、6月以降発売予定。343万5000円(税抜き予価)
(写真5)モンブラン「ヘリテイジ クロノメトリー デュアルタイム」。自動巻き、ステンレススチール、ケース径41ミリメートル、8月発売予定。54万円(税抜き予価)
(写真5)
モンブラン「ヘリテイジ クロノメトリー デュアルタイム」。自動巻き、ステンレススチール、ケース径41ミリメートル、8月発売予定。54万円(税抜き予価)
(写真6)パネライ「ルミノール サブマーシブル 1950 カーボテック(TM) スリーデイズ オートマティック」。自動巻き、カーボテック、ケース径47ミリメートル、今秋発売予定
(写真6)
パネライ「ルミノール サブマーシブル 1950 カーボテック(TM) スリーデイズ オートマティック」。自動巻き、カーボテック、ケース径47ミリメートル、今秋発売予定
(写真7)ピアジェ「ピアジェ アルティプラノ」クロノグラフ。手巻き、ピンクゴールド、ケース径41ミリメートル、9月発売予定。370万円(税抜き予価)
(写真7)
ピアジェ「ピアジェ アルティプラノ」クロノグラフ。手巻き、ピンクゴールド、ケース径41ミリメートル、9月発売予定。370万円(税抜き予価)
(写真8)ヴァン クリーフ&アーペル「レディ アーペル ユール フィラント ポエティック コンプリケーション」。手巻き、ホワイトゴールド、ケース径38ミリメートル、今秋発売予定。1130万円(税抜き予価)
(写真8)
ヴァン クリーフ&アーペル「レディ アーペル ユール フィラント ポエティック コンプリケーション」。手巻き、ホワイトゴールド、ケース径38ミリメートル、今秋発売予定。1130万円(税抜き予価)

※【時計の祭典ジュネーブサロン】現地リポート(前編)はこちら

 ジュネーブサロンは、新作時計を世界に向けてお披露目するだけでなく、各国のバイヤーとの商談が重要な目的になっている。このため、来場者を限定したエクスクルーシヴな展示会として運営されており、2015年は昨年の4%増にあたる1万4500人(報道関係者1200人を含む)が招待されたという。

 日本から来場した時計専門店のバイヤーは「全体としてリニューアルやマイナーチェンジが目立ちましたが、個性や強みをさらにバージョンアップした魅力的なモデルが多かったですね」と感想を語ってくれた。そんな会場からの現地リポート後編として、通常の時計表示に加えて特別な機能を備えた新作を中心に紹介する。

◆ジャガー・ルクルト 隕石をダイヤルにしたフルカレンダー

 1833年創業の名門マニュファクチュールであり、ハイレベルな超複雑機構を毎年発表してきたブランド。今年もアストラル(宇宙、天空)を大きなテーマとして、高精度なムーンフェイズ機構を備えた独特の多軸トゥールビヨンなどが発表された。

 反転できる角型ケースで有名な「レベルソ」が来年に85周年を迎えることから、今年は丸型「マスター」の新作が多く、北半球の星座カレンダーなどを表示するグランド・コンプリケーションも発表されたが、隕石をスライスしてダイヤルにした「マスター・カレンダー・メテオライト」(写真1)の美しい模様が魅力的だった。ムーンフェイズも備えたフルカレンダー・モデルなので実用性も高い。

◆IWC 「ポルトギーゼ」をリニューアル

 複雑機構を得意とする技巧派ながら、パイロットウオッチなどで若者にも人気の高いブランド。スイス時計では数少ないドイツ語圏のシャフハウゼンに本社がある。

 今年は誕生75周年を迎えた「ポルトギーゼ」で各種の新作が発表された。新工場を建設中であり、今後は製造拠点を集約して新型ムーブメントを増産していく予定。今回のリニューアルでは、その第一弾となるキャリバーが数多く採用された。これを象徴するのが、同ブランド初の「アニュアル・カレンダー」(写真2)。月、日付、曜日を3つの小窓で表示するが、2月末を除く月末はすべて自動送りされる。2つの香箱による7日間のスーパーロングパワーリザーブも高度な技術力の証明だ。

◆ヴァシュロン・コンスタンタン 創業260周年を記念して新コレクション

 1755年に創業したスイスでも最老舗のブランドのひとつであり、今年で260周年を迎える。これを記念して、同ブランドでは久々となる新しいコレクション「ハーモニー」が発表された。

 1928年発表の自社クロノグラフにインスパイアされたというソフトな曲面のクッションケースが特長となっており、7タイプの限定モデルに、自社開発による4種類の新しいムーブメントが搭載されている。予価3600万円のグランド・コンプリケーションもラインナップされているが、ここでは海外旅行時に便利な第2時間帯表示を持つ「デュアルタイム」(写真3)を紹介した。分針も備えた12時間計と、小さな昼夜表示計を配置した個性的なモデルだ。

◆A.ランゲ&ゾーネ 歴史的な傑作に新ムーブメントを搭載

 1845年にドイツ・ザクセン州で創業した名門老舗ブランドだが、第2次世界大戦後に東ドイツ政府に接収され、東西統合の1990年に奇跡的に再興。以来、懐中時計の頃からの伝統やザクセン特有の技法にこだわりながらも画期的な時計機構を開発してきた。

 そんな同ブランドが1994年に再興後の第一弾として発表したのが「ランゲ1」であり、オフセンターの時分表示や大型分割日付表示など、後の時計界に与えた影響は大きい。およそ20年を経た今年はリニューアルを敢行。自社製ヒゲゼンマイの新ムーブメントを開発・搭載したにもかかわらず、デザインは一切変わっていない(写真4)。そんな姿勢にも感心させられるブランドなのである。

◆モンブラン 昨年に続いて新コレクションを追加

 筆記具の名門が時計界に本格進出したのは1997年。それから急速にラインナップを拡大し、独創性と高度な技術力を駆使したコンプリケーションをハイエンドとして、裾野には若者向けの廉価モデルも揃えたビッグ・ブランドに成長した。

 新作意欲も旺盛で、昨年の「マイスターシュテュック・ヘリテイジ」に続く新コレクションとして「ヘリテイジ クロノメトリー」が追加された。高度な技術と時計美の追求をテーマとしており、価格的にも魅力的なモデルが多い。中でも「ヘリテイジ クロノメトリー デュアルタイム」(写真5)は、操作が簡単でスタイリッシュなGMTであり、12時位置の独特な24時間計が個性的なアクセントになっている。

◆パネライ 「サブマーシブル」で3タイプの新作が登場

 イタリア海軍特殊潜水部隊のために製作されたダイバーズウオッチをルーツとするブランド。

 今年は1956年にエジプト海軍の要請で開発したモデルに搭載した逆回転防止式ベゼルを採用した「ルミノール サブマーシブル 1950」で3タイプの新作が発表された。300m防水のダイバーズウオッチであり、自社開発のフライバック・クロノグラフ・ムーブメントP9100を搭載したチタン・モデル2タイプに加えて、カーボンファイバーを圧縮・積層した特殊な「カーボテック」モデルもラインナップされている。写真のように、ケースに浮かんだ独特の地紋が特長となっており、チタンより軽量で硬度が高く、衝撃にも強いという。

◆ピアジェ 世界最薄のフライバック・クロノグラフ

 宝飾系で知られるブランドだが、昔から機械式ムーブメントを自社開発・製造してきた生粋のマニュファクチュールであり、特に薄型の時計開発で高度な技術力と実績を誇る。昨年はケースと手巻きムーブメントを一体化することで、厚さ3.65ミリメートルという驚異的な世界最薄記録を達成した。

 それに続いて、今年も世界最薄のムーブメント(4.65ミリメートル)とケース(8.2ミリメートル)の手巻きクロノグラフが登場(写真7)。しかも計測途中にワンプッシュで再スタートできるフライバック機構を備えている。厚さを抑えるためにサブダイヤルをフラットにしており、それがノーブルな印象を与える。エレガントなスーツ姿にもフィットするクロノグラフだ。

◆ヴァン クリーフ&アーペル 流星群の美しさを表現したポエティック コンプリケーション

 四つ葉のクローバーをアレンジした「アルハンブラ」などでお馴染みの名門ジュエラーであり、時計でも芸術的な装飾性に富んだレアピースを発表。加えて近年は、独特の発想を機械式機構でロマンチックに表現したポエティック コンプリケーションの新作も恒例になってきた。

 今年は、年間カレンダーをベースとして、夜空に輝く流星群をダイヤルにアレンジ。予測可能な動き(周期性)を表現するだけでなく、時計の裏側ではその時期の1時間あたりの流れ星の平均数を示した曲線も表示する新作が登場した。流星を見ながら願い事をすれば叶うといわれるが、その準備も可能な壮大な天空時計といえるだろう。

(ライター・笠木恵司)