イラク戦に勝利して喜ぶ日本代表の選手たち(c)朝日新聞社 @@写禁
イラク戦に勝利して喜ぶ日本代表の選手たち(c)朝日新聞社 @@写禁

「このことに関しては断言できます。影響はまったくありません。このチームは互いに信頼し合っています。同じ目標に向かって選手、コーチ、スタッフはまとまっているので全く影響はありません」

 アギーレ監督の八百長疑惑が選手にどのような影響を及ぼすのか。それを聞かれたキャプテンの長谷部は、即座に真っ向から否定していた。そして、イラク戦を2日後に控えた1月14日、スペインのバレンシア裁判所はアギーレ監督に対する告発状を受理。しかし、このことに関して指揮官は、口をつぐんだままアジアカップの第2戦を迎えた。

 ともに初戦で勝ち点3を獲得しているだけに、勝てばグループリーグ突破に大きく前進する。まして日本はアギーレ監督の身辺が騒がしいだけに、スカッと勝って周囲の雑音を封印したいところだ。ヨルダン戦では激しい肉弾戦を挑んでいたイラクだが、気温27.4度、湿度80%の蒸し暑さが影響したのか、立ち上がりから中東の古豪は慎重だった。

 これに対して、日本は4分に岡崎が、11分には香川が、いずれも本田からのパスを受けて惜しい形を作る。パレスチナ戦では精彩を欠いた本田だったが、コンディションは明らかに向上していた。17分には長友のクロスから決定機を迎えたものの、本田のヘッドは右ポストに防がれる。それでも22分、乾のクロスを香川が至近距離から狙ったシュートはGKに防がれたが、こぼれ球にコンタクトした本田が倒されてPKを獲得した。

 キッカーはもちろん本田。パレスチナ戦と同様、右スミに流し込んで日本が先制。その後もペースの上がらないイラクだけに、後半はゴールラッシュが期待されたものの、この試合のMVPでもある本田のシュートは右ポストやバーに嫌われ、なかなか追加点が生まれない。63分には清武と今野を投入し、香川をトップ下に置く4-2-3-1でアギーレ監督は攻守を活性化しようと試みたが、ついに追加点は生まれないまま90分間が終了した。

 試合後の会見ではいつもの柔和な表情が戻っていたアギーレ監督。結果を出したことで一安心したのだろう。グループリーグ最終戦の相手は、この日パレスチナを5-1で下したヨルダン。日本は勝つか引き分ければ首位通過が決まる。万が一負けて、イラクがパレスチナに大勝すると3チームが勝ち点6で並び、当該対戦成績も三すくみのため3カ国による得失点差の争いになる。それを見越してイラク戦では大量点が欲しかったし、そのチャンスもあったが、終わった試合をいまさら悔いても仕方がない。

 本田に加え香川も試合を重ねるごとにトップフォームを取り戻しつつあるだけに、ヨルダンも問題なく一蹴するだろう。決勝トーナメントに向けて唯一の不安材料は、乾、武藤、清武やラッキーボーイ的な存在がゴールに絡んでいないことだ。ニューカマーの台頭を楽しみに待ちたい。

(オーストラリア・ブリスベン=サッカージャーナリスト・六川亨)