味はもちろんのこと、健康や美容にも良いとされるオリーブオイル。ただ、ひとくちにオリーブオイルと言っても、その品質・グレードはさまざまだ。最高品質は「エキストラバージン・オリーブオイル」で、オリーブの果実を搾ってろ過しただけで一切化学的処理を行っていないものだけを指す。また、以前日本では「ピュア・オリーブオイル」とも呼ばれていた、いわゆる「オリーブオイル」は、精製したオリーブオイルにバージンオリーブオイルを少量ブレンドしたもので、エキストラバージンに比べ品質は劣るとされている。

 しかし、近年、世界中でオリーブオイルの品質や表示に関して意図的な偽装や、意図的か否か判断はつかないものの「不適切」な表示の商品などが、出回っていたことが問題となっている。こうした問題が起きた国々では、表示基準が見直され、改善施策も進められている。だが、日本の対応は完全に出遅れているという。

 腸の生活習慣病が専門の医師・松生恒夫氏と日新オイリオ・家庭用事業部主席の鈴木俊久氏の両氏は共著『オリーブオイル・ハンドブック』(朝日新書)で、この問題に言及している。

「日本ではオリーブオイルの食品としての安全性については食品衛生法の各法規によって守られていますが、オリーブオイルそのものの品質規格に関する遵守法規は存在しないのが実態です。その取得(認証)が任意である日本農林規格(JAS規格)中の食品植物油脂の規格の中には『食用オリーブ油』が含まれていますが、その定義は『オリーブの果肉から採取した油であって、食用に適するように処理したもの』という大雑把なものです」

 JAS規格では「オリーブ油」と「精製オリーブ油」の2区分しかなく、「エキストラバージン」といった品質グレードの概念が存在しない。さらに、規格項目は海外の諸規格に比べて項目数も内容も貧弱だという。そのため、取扱業者がオリーブオイル製品の品質管理を行うに当たっては、EU(欧州連合)やIOC(国際オリーブ協会)の規格を拠り所とせざるをえないのが実態だが、それに伴い、ヨーロッパでは流通させられないような品質のものを日本で売ったとしても、法的には問題ないケースがありうるのだ。

 もちろん国内生産のものに関しては業界団体「日本植物油協会」が、オリーブオイルに限らず各種植物油の品質管理や表示の適正化に関して目を光らせてはいる。ただ、オリーブオイルの多くは輸入モノ。同協会の会員外の輸入業者が取り扱うケースが多いため、コントロールが十分に利かないのが実情だという。

 こうした事態を予防するための「制度改革」は必要だが、まず直近のリスクを避けるにはどうしたらよいだろうか。本書では「この問題にかんして確実な方法はなかなかありません」とした上で、こう答えている。

「一つだけ言えることは、日本の信頼できるオリーブオイルメーカーが、日本産のオリーブオイルを使用して製造したオリーブオイルを取る、もう一つは日本の大手食品会社が、現地(例えばイタリアなど)で責任をもって産生したオリーブオイルを取ることなどに尽きるのです」

 日本のオリーブオイル輸入量は2014年現在、世界4位で、愛用者数はどんどん増えている。その理由の一つが「健康」だ。だが、健康に良いと思って摂取したオリーブオイルによって、健康を害する可能性があるのだという。健康に良くて、しかも美味しい。そんなオリーブオイルを安心して楽しむためにも、必読の一冊といえるかもしれない。