毎年、ユーキャンが年末に発表する「新語・流行語大賞」。2012年の大賞は、お笑い芸人・スギちゃんの「ワイルドだろぉ」。2013年は「今でしょ!」「お・も・て・な・し」「じぇじぇじぇ」「倍返し」の4つが大賞に選ばれた。

 2014年度はすでに50の候補がノミネートされている。女性お笑いコンビの日本エレキテル連合の「ダメよ~ダメダメ」。世界中で大ヒットした『アナと雪の女王』からは、「ありのままで」「レリゴー」の2語がノミネートされている。また、「妖怪ウォッチ」「壁ドン」なども。

 これら2014年の「新語・流行語大賞」の大賞・トップテンは12月1日に発表されるが、もう一つ、リクルートが発表している「トレンド予測」をご存じだろうか。2010年1月から始まった試みで、同社が展開する住宅、採用などの事業の中で、トレンドとなるキーワードを予測している。 2013年12月に発表された 「トレンド予測」 を見てみると、「スマ勉」(高校生の進学)や「バン買い世代」(自動車)、「いざか族」(飲食)などのキーワードが並ぶ中に、「ありのママ採用」(アルバイト・パート)というキーワードがある。

 これは、ありのままの“ママのチカラ”を積極的に評価し、採用するということ。リクルートは、2013年の時点で、子育てが一段落し、社会復帰しようとしている女性の、ありのままの力を戦略的に活用する「ありのママ採用」を行う企業が増えていること実感している。これまで、接客やサービス業のアルバイトは若者が中心だったが、昨年ぐらいから、「主婦や育児経験を通して身に着けたスキルを生かして活躍するミドル女性の存在が目立ち始めた」という。

 その理由を、1986年に男女雇用機会均等法が施行されたことを背景に、次のようなモデルで考察している。45歳のミドル層の女性の例を見て行くと、1986年に18歳だった女性は、その後社会人経験を10年ほど積み、28歳で結婚し退社。そして第一子を出産後、第二子も32歳で出産。その第二子が中学に入学したのが2013年。その間、主婦として母親として“ママのチカラ”を培った現在45歳前後の女性は、子育てが一段落し高い社会復帰意欲を持っている、というわけだ。

 そんな彼女たちを採用することで、サービスの質が向上したと評価する企業は多く、主婦ならではの視点を生かして客単価を上げた店長など、売上に貢献する事例も出てきた。

 そんな企業の一例が、ベビー服・子供服メーカーのミキハウスだ。ミキハウスには、「ミキハウスリンク」という出産・育児で同社を退職した人が入会できるサークルがある。定期的に会報誌が送られ、その中には求人情報も。さらに、社長から毎年年賀状が届くという。こうして、退職後も同社への帰属意識は薄れず、復職も容易になる。さらに、職場復帰した母親にはその経験を活かすことができる職種も用意されている。それが、初めて妊娠・出産・育児を経験する新米ママ、パパのために店舗に常駐する「子育てキャリアアドバイザー(KCA)」だ。まず、職場への復帰を希望したら「マタニティ&ベビーの接客スペシャリスト」として認定され、同社の研修プログラムに参加(1年間)する。その後、自身の子育ての体験等を踏まえながら、商品購入についてアドバイスする販売員になることができる。

 KCA認定1期生で、現在、新宿高島屋店に勤める木村美和さんは、「毎日のように、小さなお子さんのお母さんや妊婦さんとお話しをします。私の息子はもう中学2年生で、赤ちゃんとの生活は遠い昔のことになっていますが、自分の経験も踏まえてお話しすることも多い」と話す。時には、商品に関する相談以外に、義理のお母さんやママ友が何気なく言った一言に傷ついたという話や、赤ちゃんと二人きりの日常に「大人と話がしたくて…」と来店する人もいる。また、妊婦の時から来店していた女性が、生まれた赤ちゃんを見せに連れてきてくれることもあるという。「そういうことがあると、いち販売員とお客様の関係から、さらに一歩近づけた気がします。本当に幸せな仕事だなと思います」(木村さん)

「主婦やママだからこそ、できる仕事がある。主婦である、ママである、ありのままの自分に自信を持って社会に飛び出してほしい」とは、ミキハウス人事部長の藤原裕史氏の言葉。

 もし、新語・流行語大賞に「ありのままで」が選ばれたら、この「ありのママ採用」も注目を浴びそうだ。

【関連リンク】
KCAについて(ミキハウス)
http://baby.mikihouse.co.jp/information/post-2492.html