近頃、書店の売り場を訪れると、イラスト付きの文庫小説が売り場を席巻していることに気が付く方も多いのではないだろうか。イラスト付きの文庫小説といえば、いわゆるライトノベルが主流とされているが、また新たな勢力が席巻し、出版界のトレンドになりつつある。

 その筆頭は、なんと言っても『ビブリア古書堂の事件手帖』(三上延、メディアワークス文庫)だろう。古書店の美女が本にまつわる謎を解く「ちょっと軽め目のミステリー」で、シリーズ累計で550万部越えの大ヒット作で、ドラマ化もされた。また、喫茶店の女性バリスタが謎を解く『珈琲店タレーランの事件簿』(岡崎琢磨、宝島社文庫)は120万部と、出版不況が続く業界的にも無視できないジャンルとなっている。

 こうした小説本は、いったいどのような内容で、どんな読者層にリーチしているのだろうか。実際に手に取って見ると、大まかな傾向が見えてくる。「いわゆる萌え志向のライトノベルではない」「現実世界の設定が多い」「軽めのミステリー的な話が多い」といったところか。

 実際に本を売る書店員からも「もともとは萌え系ライトノベルや、角川文庫などのキャラクターミステリー系のファンである、20代~30代くらいの層や、ミステリーを読んでみたいけど難しくて読みにくいのはちょっと…という学生さんなどに、主に購入していただいているようです。カバーデザインがパステル調の色彩なので、女性にも手に取りやすいと思います」(紀伊國屋書店札幌本店・浅野氏)といった声が聞けた。

 こういった作品群のジャンル名は様々で、「キャラ文芸」「キャラミステリ」「ライトミステリ」などと、出版社や各書店の売り場によっても呼び方が変わる。「まだ新しいジャンルなので、呼び方は一定していないようです。ただ、出版社の間ではすでに売れ筋ジャンルとして認知されており、『キャラもの』とか『キャラクター系』というくくりで営業同士が話すことが多いです」(出版社営業)

 各出版社では、ヒットを受けてこうした「キャラもの」ジャンルの新レーベルを作り始めている。今年は特に当たり年で、6月にライトノベルの老舗、富士見書房が「富士見L文庫」を、9月には大手の新潮社が「新潮文庫nex」を始めたのに続き、11月5日には白泉社が「招き文庫」、11月20日には朝日新聞出版が「朝日エアロ文庫」を創刊した。今後もさらに、同じキャラクター小説ジャンルでの文庫レーベルが生まれてくることは間違いない。次の100万部作品は、「キャラもの」から生まれるか!?