高倉健さんの訃報を伝えるスポーツ各紙
高倉健さんの訃報を伝えるスポーツ各紙

 11月10日に亡くなった俳優の高倉健さん(享年83歳)。11月10日は、名優・森繁久彌さんと女優・森光子さんの命日でもある。また、ひとつ”昭和の巨星”が消えた。娯楽映画研究家の佐藤利明さんが、高倉さんの生き方について語ってくれた。

「次の映画作品の準備をしているという話は耳にしていました。ただ、病気のことを知る方はほとんどいなかったのではないでしょうか。健さんは83歳でしたが、『おじいさん』という印象を抱く人はいなかったはず。高倉健という存在は年齢を感じさせない、映画に出てくるヒーローをそのまま私生活でも貫き通した人生だった。日本映画の黄金時代と現在をつなぐ存在が健さんだと思います」

 現代人は、とかく自分のことばかり考えがち。しかし、そんな時勢に背を向けるように、高倉さんは自分のことより他人への思いやりを大切にしてきた。その姿は、高倉さんが映画で演じてきた役と非常に重なる。

「健さんは映画のイメージを最期まで裏切らなかった。私生活でもイメージを崩さないように、ストイックな生き方を心がけていたと思います。映画を見た人を決して裏切らなかったともいえる。周囲への心配りを欠かさなかった健さんらしい生きざまだったと思います」(佐藤氏)

 高倉さんのこまやかな心遣いを象徴するこんなエピソードがある。

「ある俳優さんの一周忌で、その方のご自宅を訪問した時、仏壇には高倉健さんが持参したお線香が供えてありました。ご家族に聞くと、目立たないように、お線香をあげに訪問されたようです。また、別の俳優さんですが、健さんが午前4~5時にお墓参りにいらっしゃったという話も聞きました。健さんは自分が来て迷惑にならないように人目がつかない時間を選んでいたようです」(同)

 高倉さんの死去を伝える所属事務所のファクスにはこう書かれていた。
 <病名 悪性リンパ腫 「往く道は精進にして、忍びて終わり悔いなし」>
 まさに、その言葉通りの誠実に歩んだ人生だった。