●エネルギーをつくるだけでなく、使い方も考える

 オフグリッド発電の取り組みや今後の展開について、藤野電力エネルギー戦略企画室の小田嶋哲也室長に話を聞いた。

「現在は電力をつくる藤野電力に対して、節電を提案する“節電女子”という活動もあります。湯水のようにエネルギーを使えば、再生エネでいくら作っても足りない。膨大な需要を賄うために太陽光発電の設備が広大な土地を占有するようになり、自然破壊の原因になる可能性もある。見落としがちですが、つくるだけではなく、限られたエネルギーを、何にどれだけ使うのか考えないといけない。再生エネの普及にはこの両面が必要です。

 また現在、町内に7ヵ所の市民発電所(充電ステーション)をつくりました。電動バイクや電動自転車、携帯電話の充電に使えます。今後は充電ステーションと電動自転車の数を増やして、観光客の利用を考えています。

 まだ実験段階ですが、小水力発電に取り組んだり、燃焼効率の高い薪ストーブであるロケットストーブのワークショップも開催しています。太陽光だけを扱うのではなく、将来的に多様なエネルギーの中から、その地域の土壌に合った最適な自然エネルギーを見極めて、選択、アレンジして皆さんに提案することを考えているからです。また、ただ提案するだけではなく、我々がアイデアを実現できる技術力を身に着けることが大きな目標ですね。そのことをメンバーが意識しながら試行錯誤を繰り返し、経験を積み上げていきたいですね」

 売電をせずに、自分でつくった電気を自分で使う自給自足タイプのオフグリッド発電は、自分の生活スタイルに合わせてカスタマイズできるという長所がある。消費電力の一部を賄ったり、非常用電源として利用したり、アウトドアや屋外イベント、車に搭載するなど用途は多様だ。生活の一部にオフグリッド発電を取り入れることで、エネルギーの有限性やその使い道を工夫するようにもなるだろう。そして、その結果、個人レベルでのエネルギーに対する価値観やライフスタイルのシフトを促し、引いては日本の再生エネの未来を切り開く……そんなことを期待したい。