パ・リーグのクライマックスシリーズファーストステージ第3戦、オリックス日本ハム戦は延長10回の末、中田翔の決勝ホームランで日本ハムが2対1で勝利を収め、ファイナルステージへの進出を決めた。

 セ・リーグのファーストステージ第2戦も阪神と広島が息詰まる接戦を演じ、延長12回の末0対0で引き分け、規定通り阪神がファイナルステージ進出を決めている。

 この阪神対広島戦のハイライトは阪神の守護神、呉昇桓の来日後初となる3イニングの熱投だが、オリックス対日本ハム戦でもオリックスの佐藤達也が1イニング3分の2、平野佳寿が2イニングを投げた。中継ぎの佐藤が1イニング以上投げることは珍しくなく、シーズン67試合のうち17試合あったが、守護神・平野は62試合のうち1イニングを越えたのは2試合しかなかった。結果は次の通り。

■3月28日 日本ハム 2回、2安打、1自責点
■5月26日 DeNA  1.2回、2安打、1自責点

 1イニングを越えるリリーフで一度も成功していない。それでも首脳陣が10回にマウンドに送り出したのは9回のピッチングがよかったからだ。2死二塁の場面で3番の陽岱鋼に対し、5球続けて149キロ以上のストレートを投じ(150キロ以上が4球)、最後は139キロのフォークボールで空振りの三振に取っている。この快刀乱麻がベンチの判断を狂わせたと私は思っている。

 それにしても見事だったのは、ファーストストライクを打った中田である。1ボールからの150キロのストレートを見逃さず、一発で仕留めてバックスクリーンへ運んだ。

 「狙い球以外には手を出さない待球タイプ」か「ファーストストライクから打っていく好球必打タイプ」か、数年前まで好打者の定義は意見が分かれていた。今ははっきりファーストストライクから打っていくほうが成績はいいと断言できる。

 この試合を振り返ってみてもそれがわかる。オリックスの1回裏の先制点は、1番駿太の初球ストレートを捉えたライトへのホームラン。それに対し日本ハムの同点打は6回表、稲葉篤紀が3球目のチェンジアップを捉えたライト前のヒットである。このときの配球は、初球ファウル、2球目ボール、3球目チェンジアップで、ストライクコースにきた球はすべて打ちにいっていることがわかる。そして、中田の決勝ホームランは前に書いているように1ボールからの150キロのストレートである。

 中田をはじめ数多くの強打者を輩出している大阪桐蔭高校の西谷浩一監督は、中学球児を評価するときの基準を「1球目から振っていける選手かどうかに重点を置いている」と明言している。大阪桐蔭出身の中村剛也、浅村栄斗、森友哉(西武)、平田良介(中日)、そして中田がプロで活躍する理由が垣間見える。

 投手では、この日登板した中継ぎ投手のスピードに注目した。オリックスは佐藤、馬原孝浩、平野、日本ハムは宮西尚生を除く鍵谷陽平、白村明弘、クロッタ、増井浩俊が揃って150キロ以上を計測しているのだ。

「現在の野球と昔の野球ではどっちがレベルが高いか」と聞かれたメジャーリーガーが「9回に150キロ以上のスピードボールとフォークボールを投げる投手はベーブ・ルースの時代にはいなかった」と答えたという話を聞いたことがあるが、当意即妙の答である。

 スピードボールを投げる投手が増えれば、それに対応する打者も増えるのは当然である。大谷翔平の150キロ中盤を越える剛速球でも、それしかこないとわかればプロの打者なら捉えられる。

 そうならないための技術が変化球を交えた「緩急」である。この日先発した西勇輝(オリックス)やメンドーサ(日本ハム)にはそれが備わっていたが、オリックスの守護神、平野はスピードで押していこうとしすぎて墓穴を掘った。
(スポーツライター・小関順二)