サッカーの国際親善試合キリンチャレンジカップの日本対ジャマイカ戦が2014年10月10日夜、新潟のデンカビッグスワンスタジアムで行われ、日本が1-0でジャマイカに勝った。アギーレ監督は就任から三戦目で初勝利を飾った。世界ランクは日本が48位、ジャマイカは100位。この試合を、サッカージャーナリストの六川亨氏が解説する。
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 アギーレ監督にとって初勝利となったジャマイカ戦だが、正直な感想を言うと「退屈な90分間」だった。相手は98年のワールドカップに初出場したものの、その後は一度も予選を突破できていない。

 さらに、イングランドのプレミアリーグやアメリカのMLS(メジャーリーグサッカー)に所属する主力も欠いていた。格下の2軍相手ということで、何点取るかに興味は集まった。しかし結果は16分の相手オウンゴールによる得点だけ。アギーレ監督も「試合結果を表す得点ではない。点差をつけるチャンスは4回あった。結果には満足していない」と不満を述べていた。

 ただ、「退屈」だったのは、ジャマイカのせいばかりでもない。おそらく今後もジャマイカ戦のような試合が続くだろう。というのも、アギーレ監督の目指しているサッカーのスタイルそのものが「退屈」な可能性があるからだ。

 ザッケローニ前監督は、ボールポゼッション(支配率)を高め、パス・サッカーで3年前はアジアを制し、ブラジル・ワールドカップに挑んだ。本田や香川が「自分たちのサッカー」と言うスタイルだ。ボールポゼッションが60パーセントを越えることも多かった。しかし、コートジボワールやコロンビアのカウンターに沈み、グループリーグで敗退した。

 ワールドカップは年々、華麗な個人技や質の高いサッカーで観客を魅了する場ではなく、「勝つ」大会へと変貌している。その証拠としてカウンターやフリーキック、コーナーキックなどのセットプレーからの得点が増えている。

 そしてアギーレ監督である。格下のジャマイカに20本のシュートを浴びせたものの、ボールポゼッションは90分間で51.6パーセントにとどまった。アギーレ監督の目指すサッカーそのものが、ボールを保持することではなく、「プレーのフィロソフィー(哲学)より、まず勝つこと」にあるからだ。

「選手によってゲームの性質は変わるのは事実です。本田、香川、武藤、柴崎はボールを欲しがるが、相手が前からプレスを掛けてきたので、パスをつなげないため長いパスを使った。プレスを掛けられたらリスクを冒したくない」(アギーレ監督)

 ザッケローニ前監督がロマンチストなら、アギーレ監督は間違いなくリアリストだ。ただ、こうした姿勢はこれまでの日本に一番欠けていたことでもある。日本代表に限らずアンダー世代でも韓国戦は「良い試合をした。試合内容では日本が上だった」と言われながら負けることが多い。

 しかしながら、リスクを排除したサッカーは、退屈でも波乱を起こす可能性がある。そういう意味ではブラジル戦が楽しみでもある。
(サッカージャーナリスト・六川亨)