単身者や共働き夫婦が、忙しい仕事に追われながら犬やを飼うことは、決して容易ではない。しかし、さまざまな努力や工夫を重ねて、ペットと暮らす。そんな「ワークペットバランス」を重視している人たちは少なくない。ペットがいてくれることは、潤いだけでなく、仕事の活力にもなっているのだ。特に独身の人たちにとっては、寂しい留守宅でけなげに自分の帰宅を待ち望んでくれている唯一の存在になる。

 そんな人たちが、最も頭を悩ませるのが、もしものときの病院通いだ。会社員の田野清夏さん(29)はこの夏、肝の冷える思いをした。出勤間際、猫のにゃんぞうが靴に吐いたのだ。にゃんぞうはゼイゼイ息をしている。

 午前7時前。確か、近所に救急診療対応の動物病院があった。にゃんぞうをキャリーに押し込み、自転車を全力でこいだ。

 にゃんぞうは、喘息と診断された。幸い、炎症は投薬で治まったが、診察代は3万円。正直言って、出費は懐にこたえた。

 お金もかかるし、手間もかかる。それでもペットと暮らすのはどうしてなのか。

「平日は仕事が忙しくて、考えてみると家には寝に帰るだけなんですよね。でも、毎朝猫パンチで起こされて、まず水とフードを出す。自分のことは二の次です(笑)」

 ペットとの暮らしには、他では得がたい温もりと交流があるのだ。

 深夜2時、井出泰斗さん(37)は、自宅マンションの扉を開けた。いつものように愛犬のサクラがしっぽを振って出迎えてくれる。

 就職以来、超のつく激務を続けてきた。サクラはその間、ずっと井出さんと暮らしている。

「もし一人だけだったら、帰宅しても仕事をして、朝まで企画書を作っていたと思う。サクラのおかげで、オンとオフができました」

 激務の中でも、「まだ限界を感じない」のは、リラックスを教えてくれるサクラのおかげ、と感謝している。

※アエラムック『動物病院 上手な選び方』から抜粋