10月11日から開催されるクライマックスシリーズ(以下CS)ファーストステージは、2位オリックス、3位日本ハムの間で争われる。対戦成績は12勝12敗の五分。リーグ成績はオリックスが80勝62敗(勝率.563)で日本ハムの73勝68敗(勝率.518)に差をつけている。

 最も重要な投手成績をくらべてみよう。オリックスは投手成績10傑に1位金子千尋(防御率1.98)、5位西勇輝(3.29)、7位ディクソン(3.33)の3人が入り、3位大谷翔平(2.61)1人だけの日本ハムを引き離している。チーム防御率を見てもオリックスは12球団で唯一の2点台(2.89)を誇り、付け入るスキがなさそうだ。

 死角があるとすれば12球団でただ一人、防御率1点台を記録する金子が、今季リーグ内で唯一勝ち星を挙げていないのが日本ハムという点だ。それに対して日本ハムの大谷翔平は2試合に投げて2勝0敗と好成績を挙げている。

 大谷の成長には目覚ましいものがある。今季最終戦の楽天戦では2イニングだけの投球ということもあり最初から全力で飛ばし、ストレートは自己最速の162キロを計測、フォークボールは普通の投手のストレートより速い151キロというすさまじさだった。

 2回しか登板していないオリックス戦でも、この迫力は変らない。5月4日の9回戦では、1回から3回途中の打者8人に対して、すべてストレート勝負を挑むというオールスター仕様の投球を展開。9月13日の21回戦ではもっとも難しい1対0のスコアで完封勝利を挙げ、11勝目を挙げている。この大谷が金子と投げ合って先勝する――日本ハムがファイナルステージに進出する唯一・絶対的な条件と言っていい。

 大谷は来年以降、ダルビッシュ有(レンジャーズ)、田中将大(ヤンキース)の足跡をなぞるようにメジャーリーグに移籍するための助走期間に入る。ダルビッシュは12勝を挙げたプロ2年目、勝ち上がったソフトバンク相手のCSファイナルステージ初戦で9回、1失点という快投を演じている。さらに中日相手の日本シリーズでは、最終戦の第5戦に先発して7回3分の1を1失点で切り抜け、チームを日本一に導いている。

 2人のような大エースになることを予感させるような快刀乱麻のピッチングが見たいし、あと3、4年くらしか日本にいないのなら、アメリカへ渡るまでの物語を共有したい。少なくとも私はそんな思いで大谷のピッチングを見ている。

 オリックスに関しては、今年日本シリーズを制するようなことになったら、過去10年間でパ・リーグの6球団が日本一になる、ということでもある。それはすなわちパ・リーグの充実を物語っている。

 05年ロッテ、06年日本ハム、08年西武、10年ロッテ、11年ソフトバンク、13年楽天――「過去10年でリーグ内の全球団が日本一になる」という記録は、球界に数多くある大記録の中でも達成困難な大記録になることは間違いない。大谷の伝説の序章も見たいが、オリックスの日本一も見届けたいという不思議な感覚の中に今私はいる。

 リーグ優勝を飾ったソフトバンクは、12球団の中でもバッティングの破壊力と投手力と攻撃力のバランスではナンバーワンと言っていい。ここまでセ・リーグの3球団、パ・リーグの2球団については投手力だけに触れてきたが、ソフトバンクに関してはバッティングに触れないわけにはいかない。

 打撃成績10位の中に、3位柳田悠岐(打率.317)、4位中村晃(.308)、5位内川聖一(.307)、6位李大浩(.300)、7位長谷川勇也(.300)が並び、規定打席未到達でも100安打以上放っている松田宣浩(.301)、本多雄一(.291)がいて、遊撃手の今宮健太はリーグナンバーワンの犠打62を記録している。1人1人に役割分担があり、それらが機能して「打線」を形成するという理想的なスタイルがここにある。

 投手陣は、短期決戦では欠かせないイニング後半を守り抜く勝利の方程式「森唯斗→五十嵐亮太→サファテ」が確立され、攝津正、中田賢一、スタンリッジ、大隣憲司の先発陣にも安定感がある。3球団の中ではファイナルステージを1勝0敗からスタートできるアドバンテージの恩恵もあり、優位に立っていることは間違いない。

(スポーツライター・小関順二)