半谷:おりしも「熱風」(ジブリが出しているフリーマガジン)の2号前が「ガール ミーツ ガール」という特集でしたよね。「アナと雪の女王」も姉妹と言う名の女性同士だし、このマーニーも。時代を読みながら映画を作るのはプロデューサーの仕事の一つだと思うんですけど、この作品を作るときには、ダブルヒロインを意識されたんですか。

鈴木:うまくいくかはともかく、お客さんが何を観たいかを考えます。でもそれは、お客さんに聞いても分からない。いままで観てきたものから参考意見をいうんだから。それを先回りして何だろうと考えるのが企画ですよね。それを考えているときは面白いんですよ。僕が「マーニー」をやろうといったときに、宮崎駿は反対だったんですよ。あまりにも心理要素が多いから。それはわかるけどやりたかった。これからは男女の話じゃない。女の子2人が好き同士になるのはあるんじゃないかといったら、宮さんは「そりゃわかる」と。

半谷:「あなたのことが大すき。」というキャッチも、鈴木さん作ですよね。

鈴木:これはもう少し広がりを持ちたかったんですけどね。「あなたのことが大すき。」というのは何も若い女の子たちだけに独占させるのはもったいない。おじいさんだろうがおばあさんだろうが子どもだろうが、言ってもらいたい言葉ですよね。なおかつ言いたい言葉。「情熱大陸」っていう番組で僕が登場したときに誕生した場面を詳細にやったんです。ジブリの社員にイッヒーっていう女の子がいてね。この子としゃべるとなんか出てくるんですよ。しゃべらせるとなんかいいことを言う。キャッチを考えていたときに、「ちょっとイッヒーを呼ぼう」と。ついでに情熱大陸のカメラマンに「もしかしたらいいシーンを撮れるぞ」って。僕そういう直感があるんですよ。「アリエッティ」のときもイッヒーなんですよ。その時は「イッヒーさぁ、アリエッティってどういう話?」って聞いたんですよ。「えーっとぉ、アリエッティは、人間に見られちゃいけないわけだからぁ」って。それだと思った。

半谷:「生きねば。」(「風立ちぬ」)とか「生きろ。」(「もののけ姫」)というキャッチも鈴木さんなんですよね。

鈴木:そうですね。「生きねば。」は宣伝プロデューサーと話しながらいたずら書きしてて、ヒュっと出てきた。夏に封切る映画って、キャッチコピーなどを決めるぎりぎりの日っていうのがあるんですよ。その年の正月をちょっと過ぎたころ。その頃まではあんまり考えていないんですよ。切羽詰まったらなんか出てくるだろうと。いろんな人に声をかけてやってりゃあなんか出てくるんですよね。あんまり理詰めで考えたりしていないんですよ。あ、そろそろ終わりなんですね。

半谷:そういうことです。

鈴木:わかりました、ははは(笑)

半谷:本日はありがとうございました。