日本人の生産性などを調査、研究する機関・公益財団法人日本生産性本部の「職業のあり方研究会」が今年3月、2014年度の新入社員の“特徴”を発表しました。

同研究会は毎年、就職採用環境などをもとに学生を分析し、新入社員に想定される勤務傾向を発表しています。それによれば、今年の新入社員は「自動ブレーキ型」。いったい、どんな人たちなのでしょうか? 研究会は次のように説明しています。

「知識豊富で敏感。就職活動も手堅く進め、そこそこの内定を得ると、壁にぶつかる前に活動を終了。何事も安全運転の傾向がある。人を傷つけない安心感はあるが、どこか馬力不足との声も。どんな環境でも自在に運転できるようになるには、高感度センサーを活用した開発(指導、育成)が必要」

散々な言われようですが、平たく言えば“保守的で安全策を取りがち”ということのようです。

そんな「何事も安全運転の傾向」とレッテルを貼られた新入社員諸君に、ぜひ参考にしてもらいたい一冊が『肚が据わった公務員になる! 新しい仕事哲学と自分の鍛え方』です。

保守的で安全策…といえば、かつての典型的な公務員像でした。ところが本書の著者の中野雅至氏は、「真面目で安定志向と思われがちな公務員こそ、どんな環境においても生き残っていけるような気概を持つことが大切」と喝破しています。この一文だけで、公務員ではない人でも背筋が伸びる気がするのではないでしょうか。

中野氏は奈良県・大和郡山市役所勤務を経て、1990年に旧労働省に入省。その後、旧厚生省、厚生労働省などをへて2004年に公立大学院の准教授に転身、2014年に現職の神戸学院大学に移るまで、四半世紀にわたり市、県、国、大学と、多彩な公務員キャリアを積んできた異色の人物です。

そんな中野氏によると、場所を問わず、公務員が働く職場で共通するのは、職員を評価する際に「あいつは肚(はら)の据わりがいい」という言葉が使われることだといいます。何ごとにも前例踏襲、融通がきかない「お役所仕事」のイメージとはずいぶん違いますよね。

現在、かつての“官尊民卑”から“民尊官卑”の傾向が強まっています。公務員に注がれる世間の目は、以前とは比べ物にならないほど厳しくなりました。そして、さまざまな困りごとや悩みごとを抱えた市民とじかに相対することも多い公務員の仕事は、想像するよりもずっとハードです。世の中から厳しい目に晒されても、またどんなキツイ仕事でも、物怖じせずにさばく姿が周りからの敬意を集めるというのです。

民間企業の「利益・効率性重視」の波は“官”にも押し寄せています。安定志向で公務員の道を選ぶという時代では、もはやありません。それでも、あえて公務員という仕事を選択するならば、公務員以外の職場でもやっていけるような自信と能力が必要になるだろうと中野氏は指摘しています。

 では、どうすれば肚の据わった人になれるのでしょうか。中野氏によれば、「仕事の哲学を持つこと」だといいます。自分の哲学を持っていれば、どんな状況でもびびらない。それを下支えするのが、どこに行っても通用する自信と能力なのです。

肚の据わった人が求められるのは官も民も同じ(もちろん程度問題ですが)。官民問わず、新入社員の方はそろそろ仕事にも慣れて来たころでしょう。安全運転の傾向が強すぎないか、「自動ブレーキ」をかけ過ぎていないか、どこでも通用する能力をつけるための研鑽を怠っていないか。一度わが身を振り返ってみてはいかがでしょうか。