地球村カフェ。「山元町に来たらこんな美味しいコーヒーとお菓子が食べられるんだ」と喜ばれることを目指した。
地球村カフェ。「山元町に来たらこんな美味しいコーヒーとお菓子が食べられるんだ」と喜ばれることを目指した。
山元町のいちごを使った手作りジャム。宝石のような大粒いちごを時間をかけて煮込む。
山元町のいちごを使った手作りジャム。宝石のような大粒いちごを時間をかけて煮込む。
GRAの橋元さん(左)。地球村メンバーは尊敬と期待を込めて「いちご王子」と呼ぶ。
GRAの橋元さん(左)。地球村メンバーは尊敬と期待を込めて「いちご王子」と呼ぶ。
山元町のシンボルを模った天然ハーブのバスボム。
山元町のシンボルを模った天然ハーブのバスボム。
工房地球村のメンバー。首にかけているのは「いちごものがたり」の手ぬぐい。
工房地球村のメンバー。首にかけているのは「いちごものがたり」の手ぬぐい。

 東日本大震災から3年が過ぎました。dot.では「東北の心意気―つながる笑顔―」と題して、被災地で活動する団体やお店などの情報を集めました。人、もの、こと――東北の魅力を改めてお伝えします。

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 挽きたての豆で淹れたこだわりのコーヒーに、香ばしいアップルパイ、宝石のようないちごを使った手作りジャム。落ち着いた店内の窓の外には、緑豊かな風景が広がる。これらを聞いて思い浮かべる場所は?

 東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県山元町に、そのカフェがある。町の人たちの憩いの場として、また山元町の魅力が詰まった観光スポットとして、全国から多くの人が訪れる。カフェ地球村――障害福祉サービス事業所である山元町共同作業所が運営している。山元町共同作業所の愛称は、工房地球村。心と身体、そして地球環境に優しい商品作りをコンセプトに、特産品のいちごを使ったお菓子や、可愛らしい雑貨を販売してきた。

 宮城県の沿岸部にある山元町は震災で多くの人が亡くなり、町の3分の1が壊滅状態となった。工房地球村でも若い男性スタッフが犠牲になった。登録しているボランティアも8割が被災、目玉商品であるいちごジャム作りを支援していたいちご農家もほとんどが被災した。いちご栽培の回復は絶望的に思えた。

「山元町復興のために私たちができることは何か」

 震災の2ヶ月後に運営を再開した工房地球村は、一つのプロジェクトを立ち上げた。山元町復興の願いをいちごに託した「いちごものがたり」だ。障害者のアート作品を社会に発信するエイブルアート・カンパニーの支援を受け、地球村メンバーによるイラストの商品化を始めた。特産品であるいちごやりんごをモチーフにした手ぬぐいや、山元町のシンボルであるいちごやツバメ、ホッキ貝などを模った天然ハーブのバスボムなど、可愛らしい商品が次々と生まれた。メンバーにも笑顔が溢れた。

 高品質へのこだわりは震災後も変わらない。「被災地だから、障害者だからということではなく、本当に質の高い商品づくりで山元町の魅力を全国に発信していくことが目的です」と施設長の田口ひろみさんは話す。ストーリーに共感しただけの商品は一度買うことで満足してしまうことが多いが、地球村の商品は震災から3年経った今もファンが増え続けている。2012年11月には地球村カフェをオープン。地域の人が集まって心安らげる場所にしたいと、食事や飲み物はもちろん空間づくりにも力を入れた。

 農家の復興も徐々に進み、昨年は2年ぶりに地球村のいちごジャムを作ることができた。いちご栽培の再開には、地球村元スタッフの橋元洋平さんが大きく携わっている。震災後にボランティアコーディネーターを担当していた橋元さんは、いちごの復活を志す同世代の仲間に出会い、ともに農業生産法人GRAを設立した。従来の土壌は津波被害を受けているため高設栽培へと転換、ITを駆使したハウス内管理システムの導入などで、世界に注目される企業となった。橋元さんが目指すのは、雇用の創造と町の復興。地球村ではGRA商品のいちご加工なども請け負っている。

 田口さんは「地球村のメンバーが本当にいきいきと楽しく働いているのが何より嬉しい」と語る。今後も山元町復興のためのさまざまなプロジェクトに参加して、福祉と産業のコラボレーションを行っていく考えだ。