パークタワー東雲完成予想図 グランドエントランス(画像提供:三井不動産)
パークタワー東雲完成予想図 グランドエントランス(画像提供:三井不動産)
パークタワー東雲完成予想図 グランドエントランス(画像提供:三井不動産)
パークタワー東雲完成予想図 グランドエントランス(画像提供:三井不動産)

【集中連載】アベノミクス効果で伸びる高額消費 今注目を集める高級品の新常識に迫る
~Vol.4 経年優化するマンション(三井不動産レジデンシャル)~

 「アベノミクス」の影響もあり高額商品市場が活況を呈している。しかし、同じく高額商品が飛ぶように売れた80年代のバブル景気とは様子が違い、ただ「高いもの」ではなく、付加価値を兼ね備えたプレミアムな商品が選ばれているという。今、なぜこの商品が売れているのか。本連載では、高額商品市場から見えてくる消費者のインサイドに迫る――。

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 昨年末以降、マンション販売が好調だ。不動産経済研究所によると9月の首都圏マンション販売戸数は、増税前の駆け込み需要もあり前年同月比77.3%増の5968戸。また契約率は83.5%と、好不調の目安とされる契約率70%を8ヶ月連続で上回った。最近は都心回帰傾向もあり、都心の高層タワーマンションがよく売れている。また、マンション選びのポイントとしては「自分で長く住む」、「貸すとしてもいずれ戻ってくる」ことが前提になっているという。

 バブル時代のような転売目的が主流ではないので、消費者の物件選びも「自分基準」が基本。また以前にも増して品質面が重視されるようになり、特に東日本大震災以降は耐震性・防災設備に優れ、環境面にも配慮したマンションに人気が集中している。

 このような消費者の「長期定住志向」の一方で、住民の高齢化によるマンションの維持管理体制の崩壊や、ゴーストタウン化などマンション業界は数多くの問題に直面している。また2050年には日本の総人口は3000万人減少する。すでに表面化している空き家・空き地問題が今後加速することは避けられそうにない。長く住みたいが、その物件がいつまで持つか…マンション購入者は物件の“老化”についても、考えざるを得ない状況に置かれている。

そこで今回は、三井不動産レジデンシャルが掲げる「経年優化」という理念に注目した。同社が目指しているのは、長く住むほどに価値が増し愛着が湧く=経年優化する住まい。もともとは同社の社内用語として15年以上も前から使われていたというが、ここ数年は積極的に消費者にも訴えかけている。

 同社市場開発部商品企画グループの川路武氏に話を聞いた。

 「我々は『本当に良い住まいは朽ちていくものではなく育つもの』という考え方を持っています。たとえば30年以上も前に建てられた東京板橋区の『サンシティ』。1800戸超のかなり大きな都市再生プロジェクトでしたが、徹底した維持管理と、住民の方の高い自治意識がマンションを育て、見事に経年優化を体現しています。実を言うと経年優化という考え方は、お客様のこういった実例から教えていただいた部分が大きいです」

 サンシティは、住民自ら敷地内に植えた木々が今では森のようになり、分譲時よりも緑豊かな環境になっている。

「弊社では『ふるさとになるようなマンション作り』を理念としてうたっています。経年優化した結果として“マンションでさえもふるさとになる”という考え方です。実際に都心においても一度巣立ったお子様が結婚後、お孫さんを連れて同じマンションの空き部屋に戻ってくるというケースもあります」
 
川路氏は、今後の経年優化が楽しみな物件のひとつとして、昨年11月中旬に販売を開始した地上43階建ての超高層分譲マンション「パークタワー東雲(総戸数585戸)」を挙げる。同マンションでは、住民同士のコミュニティ活動が促進されるように、また災害時の対策拠点となるように下層階から上層階まで建物全体に共用施設を配置。さらに、東京の夜景が一望できるスカイラウンジや、キッチンスタジオ、バーベキューのできる広場など、充実した設備が魅力のひとつとなっている。

 「この物件をはじめ、弊社の新しいマンションでは設備や施設面(ハード)だけでなく、ソフト面にも気を配っています。仮に豪華な石張りのプールを作ったとします。昔はそこで終わりでしたが、今では水泳教室やサークルなど住民同士が触れ合うような場所を提供するようにしています。私たちは箱を作って終わりではなく、入居者の方がいかに心地よく、長く住んでいただくかまで考えます」

 立派な設備も、コミュニティ活動などで活用しないと意味がない。同社はマンションの施設を使い、ヨガ教室やフィットネス教室などを開催し、住民同士が触れ合える機会作りを積極的に行っている。つまりソフトの優化だ。

「経年優化を実現するためには、ハード面だけでは不十分。最終的には住民の皆さまのコミュニティが維持できていないと、そのマンションは長生きできません。ですから我々はハードとソフト両面で、コミュニティ作りのお手伝いをしています。居住者にとって心地よいコミュニティ作りこそ、サステナブルな住環境には必要不可欠ですから」

 同社では、この1年以内に首都圏で販売した新築マンション全てで「入居挨拶会」を行っている。入居者が顔をあわせ、コミュニケーションを取るきっかけを与えるためだ。以前は、こうした人付き合いが面倒だからマンション暮らしを選ぶ人が多かったが、今や集合住宅でも「つながり」は重要視されており、この「入居挨拶会」も入居者から大変好評だという。「経年優化」は確実な品質と着実な維持管理、そしてなにより住民同士のつながりがあってこそ実現する。今の消費者はそうしたことまで意識してマンションを選んでいる。