二〇XX年◯月△日、日本時間午前11時頃。太陽面の中心で過去最大級の大爆発(フレア)が発生した。”スーパーフレア”と呼ばれるこの現象は、通常のフレアの1000倍のエネルギーを放出。世界各地で電波通信障害が発生し、人工衛星が故障。北極圏ではオゾン層の破壊が開始し、地上には有害な紫外線と大量の放射線が降り注ぐ。世界中の原子力発電所の電源が喪失された為、同時多発的な”メルトダウン”という最悪の事態が予想される−−−−。

 これはSF小説の一部分ではなく、京都大学のチームが世界的な科学誌「Nature」に発表した研究結果に基づいたシミュレーション。スーパーフレアは、太陽では発生しないというのが天文学の常識だったが、京大チームはそれを覆すデータを大量に発見した。

 フレアとは、太陽の表面で発生する電磁波が原因による爆発のこと。地球上の地震と同様に、小規模のものは頻繁に起こり、大きくなるほど発生する期間は長くなる。

 これまでに知られている最大のフレアは1859年に記録されている。水素爆弾10億個に相当する爆発エネルギーゆえに、地球上では磁気嵐が発生し、ヨーロッパ及びアメリカ全土の電報システムが停止した。

 通常のフレアの100倍から1000倍規模のエネルギー量を持つフレアを、スーパーフレアと呼ぶ。その発生頻度は、“800年から5000年に1回”とすぐに起こる可能性のあるものではない。しかし、一昨年の東日本大震災を起こした大地震の発生頻度が、“1000年に1回程度”であったことを考えると、近い未来に起こり得る可能性は十二分にあると言える。

 1989年に数年に1回規模の大フレアが起きた際、カナダのケベック州では9時間の停電になった。2011年の東日本大震災では、津波による電源喪失が福島第一原発の事故を招いた。スーパーフレアの発生によって、全地球規模の停電が起これば、世界中の原発で同じことが起こりかねない。人間の住める場所が、地球上のほとんどからなくなってしまう可能性さえだってあるのだ。

 この可能性について言及しているのは、先日発売となった書籍『太陽 大異変 スーパーフレアが地球を襲う日』。京大チームを率いる柴田一成教授が、スーパーフレアを含む最新の太陽の研究をまとめた書籍だ。科学界のトップランナーが人類社会の存亡を脅かす現象に対し、警鐘を鳴らした一冊となっている。