東日本大震災からもうすぐ2年が経とうとしている。しかし、警察庁によると被害の大きかった宮城・岩手県では2,400人以上が依然行方不明のままだと言う。

 もちろん救出された命も多くある。防衛省の発表では、自衛隊が人命救助した数は19,286名。その他にも物資輸送や給水支援など、自衛隊の支援は非常に大きなものだった。

 自衛隊は日頃から訓練を積んでいるものの、荒れ果てた被災地の風景を目の当たりにした彼らのショックは相当なものだったに違いない。

 そのような環境の中でも、最後まで支援を続けることができた自衛隊員のメンタルの強さは一体どこから来たのだろうか。現在、陸上自衛隊衛生学校でコンバットストレス教官として隊員のメンタル面を支援する下園壮太氏は、自衛隊員のメンタルの強さは「長期戦を戦える力」であると著書『心の疲れをとる技術』の中で述べている。
国の存続の砦である自衛隊は、苦しく長い任務を最後までやり遂げなければいけない組織である。そのためには長期間へこたれないメンタル面での強さが要求される。

 今回の大震災のような有事の場合、迅速な対応が求められるが、もちろん人間だから疲労する。そこで無理をせずに部隊を交代しながら、披露をコントロールすることによって、最終的に全隊で任務を全うするというのが自衛隊のスタイル。つまり、隊員にとっては休養することも大切な仕事なのだ。

 一方で、日本人サラリーマンは休まない人が多い。風邪を引いても「他の人もがんばっているから」と、周りに白い目で見られるぐらいなら、無理してでも仕事に出なければと思ってしまいがちだ。

 下園氏も日本人は「ムリを溜めやすい」と指摘し、それは日本が古くから行ってきた田植えや稲刈りに関係していると考察する。ひとりではできない作業のため、どうしても集団の力が必要になる。そのときに体調が悪いからと言って休めばチームワークを乱したとされるし、周りの人もずる休みを極端に嫌う。単独で行動する狩猟民族を祖先にもつ欧米人に比べると、日本人はどうしてもムリを溜めやすい精神構造になっているのだ。

 また、本書によると現在の日本は自殺者が14年連続で3万人を越えるストレス社会。日本人の無理してしまいがちな古くからの精神性が決して無関係ではないはずだ。

自衛隊の“最終的に全隊で任務を全うする”というスタイルには、多くの日本人が学ぶべきものがありそうだ。