日本では3人に1人が「がん」で亡くなる時代になっている。医療技術の発達により、救われる命も多いが、金銭的な備えがなければ十分な検査や処置も難しいというのが現実だ。

 そこで多くの人が加入するのが保険である。しかし、「内容をしっかりと把握したうえで加入しているか?」と聞かれると、正直なところ保険販売員の説明を頼りに“将来が不安だからとりあえず加入した”という人が少なくないだろう。

突然訪れる出費に備えての積み立てである保険だが、必要以上に損をしてしまう場合があるとしたら? 『金融のプロに騙されるな』の著者のひとりであり、かつて日本生命で営業を経験、その後「保険相談室」の代表を務めている後田亨氏は保険加入時の落とし穴について次のように語る。

「(保険自体の)知識がないために大切なことを言わずに済んでしまう担当者や、余計なことは言わずにおこうとする担当者に遭遇したお客さまは、余分な保障に大金を支払うことになります。そして、そのほうが担当者の報酬は増えるのです。“顧客本位のコンサルティングができていないではないか”と指摘して報酬をカットするような会社はありません」

 もちろん、すべての商談が上記のように行われるわけではないそうだが、顧客に有益な情報を与えるかどうかは営業担当者の良心に委ねられているというのが問題だという。また、成約に至る経過を記録するような仕組みはなく、“顧客利益が確実に守られる”仕組みも存在しないようだ。売り手と顧客では利益相反になりやすい体系があることを消費者は認識しておくべきだと後田氏は指摘する。

 “備えあれば憂いなし”とはいえ、大金を払うことに変わりはない。「これが人気です」、「今お得なプランは…」などの甘い言葉に頷いてしまう前に、消費者側も正しい知識を持ち、損を最小限に抑える努力をしなければならないようだ。