「素封家」とは、大金持ち、金満家のこと

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素封家(そほうか)

〔意味・由来〕 大金持ち、金満家。「素封」+「家」の三字熟語。「素封家」の「素」は「空しい」の意味があり、「封」は、「君主から与えられる領地」の意味がある。「素封家」は、位や領地がなくても、大名と同じくらいの莫大な富や資産を持っていることをいう。

 芥川龍之介は、短編小説『黒衣聖母』で新潟県の素封家に起こった奇怪な現象を書いている。聖母マリア像には、傷ついたイエス・キリストを抱く「ピエタ」のような慈愛を表すものが多いが、芥川の描く物語は、いわくつきの黒衣の麻利耶観音像の世界である。悪意を帯びた嘲笑を漲らせて、にやりと微笑むその像は、「禍を転じて福となる」のではなく、「福を転じて禍とする」のだ。それには、願いを最も醜悪な形で実現させる力があるのか、祈願者を闇に突き落とし、黒い現実を引き寄せる心願成就の世界が広がる。「素封家」の老婆が孫の回復を一心に願う気持ちが痛ましい。

〔引用〕 ―――この麻利耶観音は、私の手にはいる以前、新潟県のある町の稲見と云う素封家にあったのです。勿論骨董としてあったのではなく、一家の繁栄を祈るべき宗門神としてあったのですが。その稲見の当主と云うのは、ちょうど私と同期の法学士で、これが会社にも関係すれば、銀行にも手を出していると云う、まあ仲々の事業家なのです。(芥川龍之介『黒衣聖母』)