写真はイメージです(Getty Images)
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■市役所に“ノーマスク”で抗議に来た市民、対応した職員が新型コロナに感染

 テレビの向こうでは東京オリンピックのメダルラッシュが続く一方で、新型コロナの感染者は全国で1万人を超えてしまいました。道行くどの人も感染予防のためのマスクを着用し、日常生活の一部となっています。しかし連日の35度超えの猛暑で、熱中症予防の観点からマスクを外すべきシチュエーションも議論されています。オリンピックの華々しさと反比例するような現実の重苦しさもあってか、着用していない人をとがめるトラブルや、警察への通報などのトラブルも増えているそうです。

 先日、札幌市役所へ“ワクチン接種反対グループ”を名乗る市民がマスクを着用せずに抗議にやってきて、対応した職員が新型コロナに感染した、というニュースがありました。マスクの着用をお願いしてもかなわず、パーティション越しの対応も拒否され、1時間以上の対応の末、感染症対策室の職員2人、教育委員会の1人がデルタ変異株に感染したというのが経緯。

 このトラブルで感染してしまった職員の方は気の毒としか言いようがないですし、当事者ではない私が詳しい状況を把握しているわけではありませんが、感染を広げないという職員の安全性の面から考えると、「対応すべき市民(お客様)の声」と「言っていることは正しいかもしれないが、対応困難なクレーム」の線引きが甘かったと思わざるを得ません。

 今回は、マスク着用をめぐるトラブルについて、どう対応すべきかのポイントを具体的に解説します。

■「早めに毅然と断るべき」ではあるが、難しい

 まず、今回の事案は、初見から「なんだかおかしい」と思わずにはいられないケースです。いきなり30人ほどの男女が、アポイントもないまま市長に会わせろとやって来て、警備員の制止にも従わなかったとのことですから、「問答無用に対応拒否(排除)すべきだ」と思う人も多いのではないでしょうか。

 後付けで答え合わせをすれば、確かに、こちらのお願いを聞いてくれない、拒否される場合は、職員のみならず、他の市民の危険にもつながるため、早めに対応をお断りすべきだった、というのが今回のケースの結論です。

 ニュースで文章を読むと「当たり前だろう」と思う人も多いでしょうが、現場で対応する担当者にとっては、早めに“毅然と断る”というのができそうでできないものです。

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