■小室さんと新しい家族は親を扶養しなくても構わない

 そもそも小室さんに、母・K代さんを扶養する必要はない。扶養義務はあるけれども、「可能な範囲で扶養することが望ましい」という弱い扶養義務だ。未成熟の子に対する親、あるいは夫妻間に課せられる「なんとしても」という強い扶養義務ではない。もちろん、同居したり家計を同じくしたりする必要はない。現在の日本の民法は、そのように定めている。名実ともに「親は親、子は子」と言い切れる状況が続くのなら、日本の人々の多くは「まあ、いいか」と納得し、気持ち良く二人の幸せを願えるだろう。

 問題は、これから高齢期に向かうK代さんの生活だ。現在のところ、K代さんは自らの生活を遺族年金と就労によって支えているのだが、その生活はいつまでも可能とは限らない。高齢期になれば、突然の病気で多額の支出を余儀なくされることもある。介護を受ける必要も発生するかもしれない。しかし日本には、人生に起こりうるあらゆるリスクをカバーする生活保護という、優れたシステムが存在する。年老いた親の生活を生活保護に委ね、子世代が親と円満な関係を維持して交流を続けることは、非難されるべき選択肢ではないはずだ。

 さらに、「K代さんを扶養する義務は、小室さん個人や配偶者ではなく、日本社会にある」という見方も成り立つ。K代さんの経済状況の背景は、日本のジェンダー問題そのものでもあるからだ。

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K代さんの歩みは、日本の「ジェンダー問題」そのもの